「後悔せんようにせなあかんで?里美ちゃんの思うがままに生きたら間違いはない思うし。」


「間違ったことでもですか??」


「後悔せんやったら間違ったことやってええと俺は思うけどな。ま、犯罪系は別やで??(笑)」


そんなもんなんかなぁ??


「う~ん、やっぱよく考えてみます…。」


「それがええよ。それより来週の土曜はどこに行きたい?」


「わたしはどこでも。日曜日も休みになったんですよ。久々の連休だし楽しみしてます。」


「そうなんや。じゃあ土曜日は連れまわしたるから覚悟しとき~。」


「ハハ。楽しみしときます♪」


こんな感じで電話を切った。

でも、ウィルと戻るようになったらどうなるんやろか。

行ってええの?

もう頭がパンパンに膨らんどった。
それからほんまにウィルは毎日仕事が終わると迎えにきてくれた。

店から家に行くだけ。

毎日、それだけで連れまわされるようなんてことはなかった。

その中で1度も返事をせかすようなことはなかった。

昔みたいにバカ話ばっかりしとった。

変わったのはキス、いやわたしに一切触れてこないということだけ。

触れて欲しい思うわたしがどこかにおって、やっぱりウィルのこと好きなんや。戻ろうかな…。

思ったときに土曜日が来た。


仕事始めて初の土日の連休。

久しぶりの遠出。


久しぶりのウィル以外の男の人。



ちょっとドキドキやった。

手、出されたりせんのやろか??

とか思ったりもしとった。
「ほんまええ天気になったな~。」


朝の8時。

迎えに来てくれた志水さんはテンションが高かった。


「ほんまですね。てかどこ行くんかいい加減教えてくださいよ~…。」


「お楽しみやって言うてるやろ?ま、そんな大したとこじゃないんやけどな。期待はせんとってな…。(笑)」


わたしは行き先を教えてもらってへんやった。

でも進む道でだいたいわかってきた。

多くなってきた案内の看板。


「志水さん、この前言うてたの覚えてたんですか??」


「行きたい言うてたし…あれから行った??」


「行ってないです。ほんまここ行くんですか??」


「ここまで来ておあずけにするほどドSじゃないわ~。」


看板にはユニバーサル・スタジオ・ジャパンという文字。

前に飲んだ時、わたしはUSJに行きたいけど行く機会がないって言った。

それを覚えててくれたらしく…。

ほんま嬉しかった。

来れたこともだけど志水さんの気遣いも。
「やっぱ土曜日やし、人も多いな~。」


嫌そうに言う志水さんの横でわたしは子犬のように目を輝かせていた。

関西に住んでるくせ、実はUSJ初体験だったり。


「志水さん、わたしジョーズ乗りたいです!!わっ、スパイダーマンがおる!!写真とらなきゃ!!」


「アハハ、里美ちゃん張り切っとるなぁ。よっしゃ、行くで!!」


冬でも強い日差しの中、何時間も並んだりしたけど初のUSJは最高に楽しかった。

スパイダーマンとも写真も撮ったし。

志水さんがセサミのかぶりものを買ってくれたんで2人してかぶって歩いた。
「ほんま楽しかったです。こんな充実した日はないかもしれんですよ。」


わたしはまだ興奮が収まってなくて帰りの渋滞の中でもはしゃいでた。

志水さんもタバコに火をつけ、笑いながら


「俺もほんま楽しかったわ~。付き合ってくれてありがとな~。」


こんなことを言うから慌てて


「こっちのセリフですっ!!ほんま連れてってくれてありがとうございました。」


笑顔で答えた。


「いえいえ♪里美ちゃんめっちゃええ顔しとったで~。今日は特に。でも2人で遊び行ったなんて山崎さんにバレたら俺、ブッ飛ばされるかもしれへんな~。秘密にしといてな。(笑)」


「なんでブッ飛ばされるんですか(笑)。」


「山崎さんも里美ちゃんお気に入りやからな~。」


山崎さんも…。

他は誰なんだろうって思ったけど、志水さんだって思っていいのかな?


「お気に入りって…。趣味わるっ!!」


そう言いながらだんだんすいてきてた道を通ってわたしたちは食事をするため焼肉を食べに行った。


「夏はスタミナや!!」


という志水さんについて行っただけだけど。



この日、志水さんはUSJから焼肉まで全てのお金を出してくれた。


「かわいい妹のためや。惜しくもなんともないわ。」


って言って。

お兄ちゃんがまた出来たんだってわたしはこのとき思っていた。
「ほんま里美、どないすんの??」


久々に志穂に会ってウィルのことを話してた。

あの騒動のとき、志穂は怒りまくってウィルをしばらく着信拒否、メールシカトという仕打ちをしてた。

でも”やめたって。”とわたしが言ってからは何事もなかったかのようにはいかないけどメールだけは返すようにしとるらしい。

電話はキレそうやからまだ出きらんって言ってた。


「どないしよ~…。ウィルのことはほんま好きなんやと思う。でもまた傷つくかもしれんやん?こわいんよ。」


「わたしはウィルは友達としては好きやけど彼氏にはしたくないわ…。女好きやし、モテるし、いい加減だし。やめといたがもうええんちゃう?」


志穂はわたしとウィルによりを戻してほしくないらしく、ずっとそう言ってた。

確かに女好きやし、モテるし、いい加減。

でも一緒におるときはほんまええ奴なんよな。


「そうかもしれんなぁ。まぁウィル返事せかしたりせんし、もうちょい考えてみるわ。」


「別れ、別れ!!もう付き合っとくと辛いことばっかやって。それよりこの前のUSJのお相手とはなんもないん??」


志穂はニヤけながら志水さんのことを聞いてきた。


「お兄ちゃんみたいなもんや。向こうやってわたしのこと妹や言うとったし。」


「なんや、つまらんな。うまくいけばええのに。」


「つまらんて…あんた。」


久々の再会やったしそれからは志穂の話を聞いてた。

猛とはうまくいっとるらしいけど仕事がキツくてなかなか会えんらしい。

だから来年、一緒に住むかもしれんって。

それ聞いてほんま嬉しくなった。

ずっと仲良くて相手を思いやる2人はわたしの理想やった。
家に帰ると裕太の彼女が来とって部屋でヤっとるらしく声が聞こえとった。

ありえん…。

そう思ってまた外に出た。


もう夜の9時。

真っ暗だしとりあえず近くのコンビニに向かった。

徒歩やと10分くらい。


寂しいし、とりあえず電話しながら行こうと思って電話をかけた。


「もしもし?今大丈夫ですか??」


「大丈夫やで。どうかしたん??」


それは志水さんやった。


「いや…コンビニに歩いて行ってて、何もしとらんで歩いてると怖いし電話してみたんです。」


「1人で歩いてるん?危ないやろ!!走り!!」


「(笑)無理です。」


「里美ちゃん、運動ダメそうやもんな~(笑)何買い行ってるん??」


「いや、実は弟が彼女と部屋で…その…ね。だから帰れなくてとりあえずコンビニ♪みたいな??」


「なるほど。(笑)しょうがないな~、コンビニ迎え来たるわ。どっか行くか。つーか俺、ボーリングしたいんよ。行かん?」


「行く~♪いいんですか??」


「俺が誘っとるのにいいんですか?って何やねん。今から出るけどコンビニ着くまでは電話は切らんで?何かあったらあかんし。」


「何かあれば自分でぶっ飛ばしますよ。(笑)つーか今着きました。」


目の前にはコンビニ。

色々話してたらいつの間にか着いた。


「20分くらいで着く思うから。まっとってな。何かあったら電話してくるんやで??」


「ありがとうございます。」


そう言って電話を切った。

でもその瞬間また携帯が鳴った。

【着信 ウィル】

の文字。
「もしもし?」


「うぃ~っす。何しとるん??」


ウィルはすごくテンションが高かった。

酒とかやなく、いいことがあったんやろうなってわかるくらいのテンション。


「今コンビニおって、今からボーリング行くとこ。」


「は?こんな時間から誰と行くん??」


こんな時間言うたってまだ9時。

普通に仕事しとったら家にも帰ってへんのに。


「まだ9時やで?職場の人と行ってくる。」


「なんやねん、それ。」


一気にウィルの機嫌が悪くなるのがわかった。

こっちがなんやねんって言いたいくらいやわ。


「どうしたん?何かあったん??」


「なぁ、それ男なん??」


ウィルの野生の勘ってやつやろうな。


「別に関係ないやん。」


わたしはウィルを突き放した。


「…俺、お前が好きなんやけど。」


「知ってる。」


「なんで他の男と行くん??」


「ウィルはわたしの彼氏やないやん。関係ないやろ?」


すると電話はプチッと切れた。

なんやねん、キレたなら文句の1つでも言ってきたらええのに。

でも心が痛かった。

ウィルに嫌われたって思ったからなのかな??

しばらく立ち読みしよったら志水さんが来てくれた。

車に乗り込むとウィルのことを真っ先に相談した。

実は志水さんにはウィルとのことを1割くらいしか話しとらんかった。

だから全て今あったことまで話した。

黙って聞いてくれとって、最初に言った言葉は


「関係ないはキツすぎやな。言われたらキツいやろ。しかも好きな子から言われたんやったら傷つくで?まず今すぐ謝ったがええ。」


だった。

嫌やった。

ウィルにあんな切られ方しとったし、ノコノコかけるのが。


でも志水さんの言うとおりやって思う自分もあったし、言い方悪いけどしょうがなくウィルに電話した。

2コールくらいでコール音は消えた。

でも何も聞こえない。


「もしもし?」


「なに?」


それはいつものように明るいウィルやなくて不機嫌丸出しの怒ったウィルやった。


「さっきは…言いすぎた。ごめん。」


「彼氏でもない男になんで謝るん?」


「自分、最低やったなって思ったから。」


「なぁ、返事まだ決まってないん?今言ってほしいんやけど。」


「今!?無理やって。」


「わかった。もう俺、里美追いかけるのやめるわ。きついねん。」


きついねんって…。

お前が最初にあんなことせんかったらこんな雰囲気ならんかったやん!!

イラっとしたわたしはつい口走ってしまった。


「全ての原因はウィルやで?被害者ヅラするのやめてくれん?被害者は毎回毎回わたしなんやで?ウィルに苦しめられとるのは。」


この言葉を言うと運転しとった志水さんがこっちを見た。

そらあかんやろ。って小さい声で言ったのも聞こえた。