暫く、沈黙が続いた。

その沈黙を破ったのは、私だった。

「そういえば先生、今日から学校が始まる事、忘れてませんよね?」

「......」
みるみる先生の表情が、青ざめていく。

あ......忘れてたんだ。
色々ビックリする事はあったけど、アラーム止めにきて良かった......かな?

「やばい!」
今まで、無言だった先生が急に大声を出したかと思うと、右に左にドタバタと急ぎ始めた。

「先生?どうしたんですか?」
私が聞くと

「今日は教師は1時間早めに行かないといけないんだよ!仕度しねーと......あー。腹減った。」

あらら......

「仕方がないですね。朝食の用意してあげますから、先生は仕度して下さい。」私がそう言うと、サンキュー!お母さん(笑)と笑顔で言ってきた。

だから、お母さんって言われても嬉しくないんだけど......

先生の家の冷蔵庫には、使える食材が殆どなかったから、パンと目玉焼きとコーヒーを用意してあげた。

本当はもっときちんとした朝食を作ってあげたかったけど......
それでも、先生は美味しそうに全部食べてくれた。

何か、嬉しいな。

「ご馳走さま。じゃあ、俺一足先に学校に行くな。遅刻するなよ?」

安東先生みたいに遅刻はしませんって言ったら、ひでぇって言いながら、私の頭をポンポンと撫でて......

「じゃあ、あとでな?」
と言って、部屋を出て行った。

あっ!ここ、私の部屋じゃなくて、先生の部屋だった!

仕方がない......鍵掛けて言って、あとで先生に渡そう。

でも......
さっきのあとでな?って、秘密の恋人みたいでドキドキした......


ガチャリ。
先生の部屋の鍵を掛けて、私も学校に行く準備をするために、自分の部屋に戻って行った。