今日もまたゆきちゃんに送ってもらっちゃった……。


「ありがとう ゆきちゃん 帰りは電車で帰るから大丈夫だよ」


忙しい雪哉に迷惑はかけられないと、杏梨は言った。


「杏梨?そういう事は言わないの 君の事は親父や貴美香さんから頼まれているんだからね もしもの事があったら自分が許せない いいね?昨日と同じ時間に迎えに行くから」


「……うん ありがとう」


感謝の言葉を口にすると車から出た。


手を振ると雪哉は微笑みアクセルを踏んだ。




「杏梨、おはよう!」


肩を叩かれて振り向くと赤い傘を差した香澄が立っていた。


「今日も良かったね?雪哉さんに送ってもらえて」


香澄ちゃんに言われてわたしは頷いた。



「おはよう 西山さん」


教室に入ると同じクラスの松本 亮に杏梨は声をかけられた。


次の瞬間、杏梨は香澄の後ろに隠れる。


雪哉以外の男性が不意に近づいたり、話しかけられると拒絶反応を起こしてしまう。


気分を害されないようになるべくわからないようにしているのだが、不意に話しかけられてしまうと身体に震えが走るのを押さえられない。



「おはよう 松本くん 杏梨ちょっと具合が悪いみたい」


香澄が助け舟を出す。


「そうなんだ 西山さん 大丈夫?」


亮に聞かれ杏梨は目を合わさずにコクコクと頷く。



彼は「本当に大丈夫?心配だな」と言って自分の席に行った。


「杏梨?行ったよ?」


杏梨の肩から力が抜けた。



「ねえ?杏梨、松本くん 杏梨に気があるんじゃないかな?」


「や、やめてよ……」


まともに話をした事がないのに彼が自分に気があるなんて思えないし思いたくない。


目を合わす事すら苦手なのに。


拒絶の言葉を口にして席に座った杏梨に香澄は深いため息を吐く。