なのに今日は、いつになっても立ち上がらなかった。



「ん?美桜がここにいるから」



 歯が浮くようなセリフを言ってもワザとらしくならないのは、内外ともに人懐っこい彼だから、だろうか。



「ふざけないで」


 溝口君が行かないなら、私が行く。

 溜め息を吐いて立ち上がると、手を掴まれた。




「逃げないでよ」



 真剣な、眼差し。

 真っ直ぐなそれに全てを見透かされているようで、ドキリとした。



「逃げてなんか…」

「ないって言える?じゃあ、今夜俺につき合って」

「……なんでそうなるのよ」