「全く、泣き虫なんだから……」

そう言って、お母さんは真咲先生を見た。

「先生、ご心配をおかけしてすみません」

お母さんは、精一杯の笑顔を作った。
真咲先生は、慌てて

「いえいえ、今はゆっくり休んで下さい」

そう言って、立ち上がった。

「先生…帰るの?」

そんな私に

「また、明日伺います」

そう言うと、先生はお母さんに一礼してカーテンから出て行った。

それをボーっと見ていた私に、お母さんは

「お見送りしなさい」

そう言って、私を急かした。

お母さんは、私と先生が別れた事を知らないんだよね……

私は心配をかけさせたくなかったから、素直にお母さんの言うことを聞く事にした。

急いで先を歩く先生を追いかけた。

真咲先生がエレベーターに乗るのを見た私は、少し大きな声で先生を呼び止めた。