風瀬くんがドアを開けると、1学年の生徒が集まっていた。
「遅いっスよー?」
なんか知らないが、笑窪がある男子が声をかけてきた。
……誰?
とにかくあたし達は、1−Dの席に座る。
「つかさぁー…これ、なんの会議?」
確かに…
ツンツン頭の男子が言う。
「スースー」
んん?隣を見ると、
「ふっ風瀬くん?!」
風瀬くんが寝ていた。
スパコーン
「「「「「「「?!?!」」」」」」」
物凄いいい音が聞こえたと思ったら、風瀬くんの後ろに学年主任の高橋先生が立っていた。
「馬鹿。寝んなアホ」
馬鹿とアホのダブルコンボとは…流石番長。
高橋先生のあだ名は番長。その名の通り、昔暴走族の番長だったらしい。
ガチに怖い…
「ふ…んん??」
風瀬くんは目を覚ましたみたい。
痛くなかったのかな…
「では、風瀬も起きたし、始めんぞ?つっても、お前らは待機組だけどな」
……は?意味わかんない。
周りを見渡すと、皆もそんな顔してる。
「ようするにお前らは待機。他の生徒は、放課後講堂に集まり、学年の代表者に投票するわけだ」
「他の学年はどうなってんスか〜?」
笑窪くんが聞く。
「他学年も講堂に集まるんだが、講堂を3つに板で区切ってるんだ。だから、結果も他学年にはもれない」
「なっなるほど…だから、あたし達は結果待ちってことになるんでしょうか?」
「あぁ。意外と頭の回転が良さそうだな。麻咲は」
“意外と"って何よ!!
いままではそう見えなかったってことじゃん!!
あたしは陰でプーッと膨れた。
「では、放送が入るまで待て。放送が入ったら、学年ごとにホール1・2・3に移動するから」
発表は学年ごとにホールで言われるわけか。
ホールは3つあるから、そのうちの1つずつを1学年で使うのね!!
ピーンポーンパーンポーン♪
きたっ!!
『結果を放送します』
ドキドキ…
『男子…風瀬 夢遊(ムユウ)』
風瀬くんって、夢遊って名前なのか…すごい珍しい。
隣の風瀬くんは、ひたすらボーッとしている。
喜べばいいのに。
『……です。2名は明日、勝ち残った学年と1位を決めます。明日は、朝7時に会議室に集まるように。以上』
ん??
放送終わっちゃった?
女子誰だったんだろ〜
「じゃあ、代表者は決まった。明日は必ずここにくるように。解散」
高橋先生の合図で、皆はそそくさとでていった。
風瀬くんは、今だにボーッとしている。
「風瀬くん?選ばれてたね!!すごいねーっ」
あたしは感心したように、笑顔で風瀬くんを見た。
「???…でも、麻さ「ほんとすっごい!!モテるんだね♪あっ!またあしたねー」
あたしは1人で納得し、
ズビューーンと勢いよく帰った。
「アイツ…人の話聞けよな…」
風瀬くんが1人ポツンと呟いていたのを、勿論あたしは知らなかった。
〜♪〜♪
「んん〜…」
何?アラームまだじゃない?
半目で時計を見ると、6時40分を指していた。
いつも起きる時間は、7時30分。かなりはやい…
だれぇ〜?折角いい気持ちで寝てたのに、6時40分に電話してくるなんて、非常識な人だなぁ〜…
あたしは重たい瞼を思いっきりパチパチして、見開いた。
携帯を開くと、『着信:奈葉』の文字。
奈葉かよ〜!!
あたしが眠さに負け、またウトウトし始めたとき、また着信が鳴った。
もうっ!!
ピッ
「何?奈葉…」
あたしはかなり低い声で、電話にでた。
『はぁ?!麻咲ちん何してんのー?!あんた、代表者じゃんかっ』
……は?
あたしは朝から頭が冴えず、しばらく考えた。
代表者?だいひょう…
「なに…それ…」
『昨日放送してたじゃん!聞いてなかったの?!』
確かそのとき、風瀬くんの発表で、興奮してて放送聞いてなかった…
やばい…これは、やばい…
『聞いてなかったのね!もうっ!奈葉が言ったからよかったものの!はやく来ないと!!』
「ごめんっ!奈葉!ありがと!!」
あたしは携帯を切り、時計を見ると、45分。
「うっわっ!!」
こっから走って10分くらいかかるよね…学校。
5分しか、用意の時間ないっ(泣)
あたしは目にも見えないスピードで用意をすまし、
「いってきまーすっ」
家を飛び出した。
「りぃ姉!!忘れ物!!」
「えっ?うわっ!!」
鞄…鞄忘れてたよ…
「梓衣!!ありがとー♪」
「うん!いってら」
笑顔でひらひらと手を振る梓衣に、
「いってきー!!」
あたしも笑顔で手を振った。
梓衣流石っ!!超自慢の弟♪
ガラガラガラッ
「おっくれっましたぁ〜…はぁ…はぁ…」
あたしは学校まで全速力で走り続け、7時、1分前にギンリギリで着いた。
「麻咲…頭が切れる奴かと思いきや、抜けてんな…遅刻するなんて」
高橋先生は呆れ気味。
「ちっ違うんですっ…はぁ…昨日、放送聞いてなくて…今さっき、友達の電話で起きたんです…だから、あたしが代表者だったとは思いもせず…」
あたしの言い分に、目を丸くする皆。
といっても、5人しかいないんだけど…
2年のほうを見ると、颯が笑いを堪えていた。
むっ……ってか、やっぱ颯は選ばれるんだぁ〜
「話は聞け?麻咲…」
「ふぁい…」
あたしはトボトボと、風瀬くんの隣に座った。
「ところで、先生?わたくし達は何をするのかしら?」
めちゃめちゃ綺麗な3年の先輩がそう言った。
誰だろ…
「まずは一応自己紹介だろ?はい、3年から」
「わかりましたわ。わたくし、藍河 貴子(アイカワ タカコ)3−Bの代表者で、生徒会副会長ですわ」
へぇ〜…藍河先輩か〜
黒髪のロングを緩く巻いている。鼻筋は通ってて、きつそうな目をしてるけど、ほんと綺麗な人だなぁ〜
「次、俺。高城 朝馬(タカギ アサマ)生徒会長だ。クラスは3−C」
こっちは美形だー!!ガッチリでもなく、ホッソリでもない理想の体型。眉はキリッと。鼻筋スッと…形がいいっ!!
「次は、俺ですね?中谷颯です。仮生徒会に入ってて、2−Aです」
仮生徒会??何それ…
「私ですね…志田 絹(シダ キヌ)2−Dです」
大人しそう…お人形みたい…陶器肌だ〜…羨ましい。
「……風瀬夢遊…1−D仮生徒会候補」
……仮生徒会候補???
あっ!!あたしの番だっ!
「え…えと…麻咲李衣です。1−でぃ…っいったぁ!!!」
Dの部分で、舌噛んだー(泣)
あたしの失態をカバーしてくれたのが、高橋先生。
「コイツは1−Dの仮生徒会候補だ」
……ん?また仮生徒会??
しかも、あたしいつ候補になったんだろ?
「仮生徒会は、3年になったら生徒会に入ると決まった人のことを言う。行事には全て強制参加。手伝いも強制」
高城先輩が、説明してくれた。
うぇー…なんでそんなのに選ばれたのぉー?
「お前らは、まだ1年だから候補なんだ。仮生徒会の候補。だから良さそうな奴を、俺ら教師が推薦する」
推薦…?
「なんで推薦なんかしたんですかぁ!!」
あたしは猛反論。
「面白そうだから」
えぇー!!それだけっ?!
しかもなんで、面白そうとか言われてんの?あたしっ!
「まぁとにかく、お前らは代表者だから松コン盛り上げ頑張れよ〜?」
……いーやーだー…
「麻咲…行かないと、皆ホールに集まってる時間だし。松コンの最初の発表始まるよ?」
「あっ!ほんとだっ!!風瀬くんありがとー♪」
あたしは風瀬くんと、ホールまで歩いた。
「それにしてもさぁ〜…風瀬くんとか、他の人達は選ばれて当然だけど、なんであたしが選ばれちゃったんだろうねー?」
「わかんない…」
「手違いかなー?」
「それはないと思う。まず、麻咲は可愛いって皆言ってるから、正当な答えだと…」
あたしのほうを、チラチラ気にする風瀬くん。
「えー?皆、目がおかしいよー!!あたしが可愛い?他の子いっぱいいるじゃん!」
ふふっと笑うあたしを、風瀬くんが無表情で瞳にうつしていた。