【完】甘辛ダーリン絶好調♪


「キャァアアアアアアッ///」

「颯くんっ!!!」

「颯様っ」

「かっこいい///…」

朝からキャンキャンうっせ〜…

俺は、

中谷 颯(ナカタニ ハヤテ)

今年から高2の16歳。
黒髪のウルフに、灰色のツリ目の瞳。
耳にはピアスの穴だらけ。

一応好青年演じてるから、学校ではしてないけど。

今は今日からくる1年の、迎え係みたいな役任されてる。

まぁ俺は一応、生徒会長候補だから、仮生徒会に入ってる。

んでこんな仕事させられてるわけ。

でも毎回まいかいこう騒がれると、『女は一夜』という俺のポリシーは、跡形もなく、崩れ去った。

そろそろ適当に相手捕まえて、うるさい毎日に終止符をうちたいところだ。









「中谷、全員入場完了したか?」

学年主任の高橋に言われ、俺は名簿を見た。

……………あれ?

1−Dの『麻咲 李衣』っていう奴の欄にチェックついてねぇな…

他は……いねぇ。

こいつ誰だよ。
入学式に遅刻する奴なんて、そうそういねぇぞ?

俺はとにかく、そのことを高橋に報告した。

「じゃあ俺が親に電話してくっから、迎え係らへんで、近くを探せ。迷ってっかもしんねぇしな。」

「はい」

確かに。
この学校複雑な地形だからな…

俺は『麻咲 李衣』を探しに、走った。






あたしは一応、きた道を戻ることにした。

でも方向オンチなもんだから、わけわかんなくなってきて…

「ああ〜っ!!もうっ!!どこなわけっ?」

あたしは上を向き、思わず叫んだ。

「…どうしたの?」

すると男の子の声がして、正面を向く。

うっわ…………かっこよっ…

この人…全てがかっこいい…

ツリ目の冷たそうな印象だけど、笑顔が…

疾風くんっぽい……

あたしがボーッと考えてると、

唇に柔らかい何かがあたる。

あれ?

これ疾風くんとやったことないっけ?


あれ……?


あたしの思考回路はストップした。





しばらくして彼は、チュッとわざとらしくリップ音をならし、

「麻咲李衣。俺の彼女になれ。いや、ならねぇと犯すぞ」

あたしを脅した。

この人……何?てか、まず誰?

「なんでいきなりキスされて、見ず知らずの人の彼女になんないといけないわけ?!」

あたしがキレ気味にそういうと、彼は口元を少しあげる。

「俺が言ったことは絶対。結局はそうなる。必然だかんな」


………自信過剰すぎない?

てか…疾風くんがいんだけど。

「あたし彼氏いるから」

「はっ?……別れろ」

………無理強いするな…この人。

「無理でしょ」

「俺の言ったことは絶対なんだっ!!」

「無理だからっ!!」

「ふぅん…そっ…俺さぁ、モテるから、俺がお前に告ってふられたって女達がきいたら、お前確実に殺られんぞ〜?いいのか〜?」


………こわっ…
なんでこんなめに……
コイツがあたしに告白してきたのが悪いんじゃん。

あたしみたいな奴じゃない人選べこのやろ〜!!!

入学早々、あたしにはもう困難が立ちはだかるだなんて………グスン。

…疾風くん…ごめん。

あたし…ここで生きていたいから……

「わかった」

「よしっ!!契約成立っ俺がぜってぇ守ってやっから」

にこっと笑った彼の笑顔に、胸が高鳴ったのは気のせいだと思いたい。

それと疾風くんに重なったのも、気のせいだ…






とにかく、あたしはその場で疾風くんに電話した。

別れは寂しいけど、はやくしないと決心が鈍っちゃうし…(泣)

プルルルル…プルルルル…

『…はい。李衣?』

「疾風くん?今いい?」

『うん』

「ほんとに…突然なんだけど、別れよ?」

『えぇ?………あっ………まっまさか…美代の奴…』

…ミ…ミヨ?

『あ…のさ…美代が言ったことなら嘘だよ?俺には李衣だけだし』


…………美代、嘘、李衣だけ………?


………あたしは3つのキーワードで、1つの答えにたどり着いた。


「疾風くん…もしかして、浮気…?」


『ちがっ違うんだって!!そんなわけ………ん?あれ?…もしかして…知らなかった?あっあぁ〜!!てか俺が浮気するわけな〜い…』


…………あたしの中で、何かが燃え上がってきた。

「……疾風」

『はっはい?だから俺は李衣だけだ「黙れカス」…すいませんでした』


なによなによなによっ!!!

あたしは、いっつも疾風くんのこと考えて、想ってたのに…

疾風くんは…浮気?







「ふっざけんなっ!!ボケカスH下手野郎!!!!」

『なっ!!!じゃあ李衣は負けず嫌いのキス下手野郎だよ』

むっかぁああああっ!!!

「うっさいっ!!H下手なくせに!!」

『キス下手じゃんかよっ!!』

「H下手なくせに浮気かよっ!!どんだけ自分に自信あんだよっ!」

『自信ねぇからっ!!あっちがせまってきたんだって!!だいたい李衣から“別れよう"とかいいだすんだから、李衣こそ浮気だろ?』

あたしはあなたのように、汚れてませんから。
浮気なんてしませんが?

……つか脅しだよ。脅迫だよ。

「違うしっ!脅迫されたの!!付き合わないと…ムゴッ」

わけを言おうと思ったら、彼に塞がれた。


『え…脅迫?李衣?誰にっ?!大丈夫かっ?』

なんか電話ごしに、疾風くん心配してる…

なんだか罪悪感が…

すると彼は、スッとあたしの手から携帯を奪い、

「李衣もらうね?元カレさん?」

すぐにピッと切った。

……うっわ…憎たらしい…

しかも疾風くんの話を聞かずに切るとか…この人そうとう意地悪なんだなぁ〜






そしてそのまま、彼はあたしの携帯をボキッと……


あれ?ボキッ……?


「ああああああああっ!!!!!」


何なに?なんで携帯折れてんの?

「ん?」

そんな涼しい笑顔でごまかす気かよっ!!

「だって元カレから連絡きたらうぜぇじゃん?李衣は今から俺のだろ?」

……うっ…今のはちょっときた…ドキンとね…

でも携帯折ることないじゃんかよぉ〜

そして本心言えないなんて、あたしの小心者〜(泣)


「それに、コイツムカつくし…俺と同じ名前なんて…」

なんていったんだろ…
ボソボソ言うから、聞き取れない…

「へ?」

「買えばいいだろ?」

それをボソボソ言ってたのか……

「うへ〜い…」

「やる気のない返事すなっ!!」

「ひゃ〜い…」

「殺られてぇのか?」

「いえいえとんでもございませぬ」

あたしの変な返事に、彼は軽く微笑み、

「何語だよ」

あたしの前髪を、手でかきあげ、額にキスを落とした。

「キス…俺が上手くしてやるよ?覚悟しとけ〜」

彼はひらひら手をふり、立ち去った。



「ぅむむむむきぃ〜!!!///」

あたしは赤くなりながら額をおさえ、その場にうずくまった。

……心臓…破裂するかも…

ていうか…彼の名前はなんだ…?どこの誰だ…?

あたしが、もんもんと彼のことを考えていると、重大なことを思いだした。


……あっ………入学式っ!?!



結局あたしは入学式早々、担任からお説教の嵐。


………辛い…
そして神様は、いつもあたしにだけ閻魔様だ…(泣)







俺が校門近くの裏庭に入ると、大声が聞こえた。

誰だ…?

近くにいくと、女だとわかった。

俺は、そいつに『どうしたの?』と尋ねた。

顔をあげた女を見て、驚いた。

コイツ…かなり可愛い。

パッチリな瞳に、小顔。髪は透き通ってて、栗色…絹みたいだ。

コイツが…麻咲李衣??

いい…こいつはいいや。

俺は、コイツの顔…麻咲李衣の顔を見た瞬間、女を巻くための女をコイツに決めた。

なんかしんねぇけど、無性にキスしたくなって、キスした。

俺は満足して、コイツを俺の女にするために、脅した。

「麻咲李衣。俺の彼女になれ。いや、ならねぇと犯すぞ」

麻咲李衣は呆れ顔。

なんだコイツ…学校の王子に告白されてんだぞ?

…脅しだけど。






すると、麻咲李衣…めんどくせぇ…李衣が大声をだし、怒鳴った。

「なんでいきなりキスされて、見ず知らずの人の彼女になんないといけないわけ?!」

なんでキレてんの?

普通喜ぶんじゃね??

でも、姉貴にしか怒鳴られたことがない俺は、無性にワクワクした。

そして俺は、口元を少しあげて、自信満々にこう言った。

「俺が言ったことは絶対。結局はそうなる。必然だかんな」

だけど…

「あたし彼氏いるから」

はい?ありえねぇ展開だ…まさかの彼氏持ち??

いや、俺は諦めない…