「ここだ」
俺が連れて来たのは、『携帯ショップ』
李衣は間抜けな顔。
なんだ…コイツ??
俺が頭をバシッと叩くと、涙目で反論してくる。
「頭叩くなんて、ひどいじゃんかー」
む…可愛い…
「……チッ…お前が変な顔してっからだ///」
ガラにもなく、赤くなる俺。
だーっ!!俺のキャラじゃねー!!!!!
そしていじける李衣。
「もういいもーん。りぃはどうせブサイクですよーっだ」
「っ…おっ前。“りぃ"って…」
かわいすぎんだろ…
「なぁに?りぃがなぁにぃ??」
チッ…
「……とにかく行くぞ」
俺は、ショップへ入った。
「ねねっなんでここなの?」
は…?コイツ天然か?
俺が携帯折ったこと、覚えてねぇのかよ…
「だーかーらー…お前の携帯、俺が壊したから、弁償だよ。べんしょー…」
俺は、首に手をやる。
コレ、癖なんだよな…
「買ってくれるの??」
キラキラした目で、見つめてくる李衣を直視できなくて、
「あぁ…」
首をかきながら、そっぽを向いた。
「俺も買うから、ついで?」
一応こう言っといた。
本当になんとなくなんだけど。
「はやく選べ」
顎で指示する俺に、怪訝な顔をする。
「ん〜…颯くん何にすんの〜?」
颯…くん?
俺が反応すると、“しまった"というような、李衣の顔。
まぁいい。
「俺は〜この黒」
素直に答えた。
すると李衣は、“お揃いにしよう"とか言い出す。
無理むり。俺、恥ずかしいんだよ…そういうの。
おもいっきり“嫌だ"というと、不満そうな李衣の顔。
そして、俯きだす。
どうしたんだ?
疾風くん…か?
あぁーもう!
つか、俺…コイツに振り回されてばっかじゃね?
俺のペース崩されまくりー…
もうやだっ!俺のペースでグイグイ行きてねぇー!
でもそれには、李衣が、元カレを忘れるのが先決なんだよなぁ〜…
あぁ〜イライラする。
何気なく俺のことを、『颯くん』って呼ぶのは、元カレの『疾風くん』との歴史があったからなわけで…
ムシャクシャすんぞ?
モヤモヤだー…
わけわかんねぇし…たかが女1人に。
何で俺…李衣選んだんだ?
なんか、めちゃめちゃ悩むんですけど。
…でもこれだけは言える。
李衣は、俺にザカザカ寄ってくる女達とは本当に、全く違う。
だから俺…本音がでんのかな…?
「おい。李衣」
ん?
あたしは颯のほうを向く。
「俺が芯から忘れさせてやるから。んな顔すんな?」
うっ…何でわかんのかなぁ…あたしが昔を思い出してたこと。
あたしの頭におかれた、颯の手が、ポンポンッと規則正しくリズムを刻む。
おーちーつーくー…
「う…ん。絶対あの馬鹿浮気野郎を根っこから、取り除いてよね!」
あたしが満面の笑みで、颯を見上げると、
「あぁ。取り除いた後は、俺を埋め込んでやるよ。芯から…俺を求めるくらいな?」
甘い言葉を笑みを浮かべて囁いた。
…………ボンッ
あっつ!!顔あっつい…
あたしは熱を持った頬に手をそえる。
「なーに赤くなってんだよっ!!」
「うるひゃいっ」
う…噛んだ…
「……くくっ噛んだ…」
「わっ笑わないでよっ馬鹿っ!」
あたしは思わず、颯の背中をバシッと叩く。
「いって…てめぇ…」
やべ…怒らせた。
目がそう言ってるもん。
「殺られてぇのか、ぁあん?」
「う…」
「あぁ…犯られたいのか」
……??
なんかイントネーションが違くなってる??
「へ?」
「そうかそうか。李衣ちゃんはそんなにか」
は…はい?李衣ちゃん??
「何のこと…むぅっ!?」
はっえっ?ここショップ内だよね?きっキス?!?
「んっふっ…はっやぁ……てぇ…」
「馬鹿。喋んな」
そんなこと言われても…
恥ずかしすぎる〜っ///
「ぁっんぅ…」
絡む音がすごく近い。
でも…なんか…いい。
『颯』を感じられるから…
チーン
「「「ありがとうございましたー」」」
結局あたしは、颯が選んだ携帯の色違いのパープルを買った。
颯はかなり恥ずかしかったらしいけど。
「もうっ!買ったはいいけど、ここ二度とこれないじゃんかー…」
あの後、店内のお客さんと、店員さんにチラチラ見られて…
あぁ…あのたくさんの視線。
寒気がする…
「いいじゃねぇか。李衣は俺のって示すみたいで」
ポッ
…くーそー…なんでコイツは、すぐあたしのことを赤くさせんのかなー…
「んん?また赤くなってんのか?可愛い奴だな」
………!?!?!!!
「なっなななななななななな何っ!!」
「『な』多くね?」
確かに…じゃなくて…
「かっ可愛いっていった?!?」
きっと空耳だよねー
「いったよ?」
優しい笑顔の颯にキュン…ときめいた。
むきゃー!!!ときめくんですけど。
人型兵器だ…これで人類征服できるよっ!
「んな間抜けな顔してんな」
んなぁっ!!
ポカーンとしてただけなのにっ!!!
「間抜けじゃないしっ颯にときめいてただけだもんっ」
………ん?
あれれ?口にだしちゃったぁああっ!!!
「おっ…おまっ…はぁあああ…」
「なっ…!!そんなあからさまに、ため息吐かなくてもいいじゃん…」
シュンとするあたしに、颯は優しい笑顔を見せる。
むーわー…かっこいい…
「素直すぎ」
チュッと前髪にキスを落とす颯。
「……颯…どんだけあたしのこと、ドキドキさせれば気が済むの…」
「あぁん?これくらいでドキドキしてんのかー?まぁ…破裂するくらい、何度もドキドキさせてやるよ。“芯から俺を求めるくらい"って言っただろ?」
そういい、意地悪な笑みを浮かべる。
あたし…もう颯に嵌まってるんじゃないかな…
颯と付き合いだして、1週間。
全校生徒は、あたし達が付き合っていることを知っている。
噂は音速で広まった。
今のところ、呼び出しとかはないけど、なんだか嫌な予感がしてならない。
「李衣?そんなしかめっつらしてどうしたの?」
!!!!…この声は…
あたしは知っている人物だけど、首だけを声のほうに向けた。
「…颯…」
そう。颯でした。
好青年が、何かと便利らしく、学校ではこの調子。
あたしの調子が狂うんだよねー…
王子颯は、優しく扱わないといけないって思っちゃうから、苦手。
かといって、
俺様毒舌エロ颯も、実際ムカつく。
でも王子よりはマシかな。
1番いいのは…
やっぱ甘甘超かわ颯だよねー♪
「おい。飛んでんな馬鹿」
コソッと耳元で呟く颯。
「なっ!!飛んでないしっ!!」
あたしの大声で、近くにいた人達が、いっせいに振り向いた。
………恥ずかしー///
真っ赤な顔で俯いているあたしに、
「飛んでるとき、俺のこと考えてただろ?いやらしいなー…李衣は」
颯が囁く。
恥ずかしさと、囁きで、
倒れそうになったあたしの腰を掴む颯。
「キャアアアアアアアッ」
「颯様素敵っ」
「なんてお優しいのっ!!」
「惚れ惚れしますぅ〜」
……む。
皆して、颯はやてって…颯はあたしのっ!!
……って、あれ?
あたし…何ヤキモチやいてんの?
無意識だった…ってことは、あたしはもう、颯のとりこ……?
自覚した瞬間、一気に熱を帯びはじめた頬。
少し俯く。
やっばい…
「李衣?どうした?」
小さな声でそういい、颯があたしの顔を覗く。