あたしは朝から絶好調っ♪
スキップしながら先を急ぐ。
あたしの名前は、
麻咲 李衣(マサキ リイ)
栗色の長い髪に、茶色の瞳。
ごく普通の15歳っ♪
しかも今日は、まちにまった入学式。
『県立松竹高等学校』
(ケンリツショウチクコウトウガッコウ)
松竹梅みたいだよね。
あたしは校門をくぐり、
体育館へ向かった。
それにしても………体育館…どこ?
歩いても歩いても着かないから、流石におかしい。
そういえば、あたしって方向オンチだったんだっけ…?
くそっ!!
こんなことになるんだったら、
梓衣(シイ)つれてくんだった…
梓衣とはあたしの弟。
14歳の現役中学生!!!
可愛いよっ!
あぁ…助けこないかな…
あたしは無意識に、そっと鎖骨に手をのばす。
………あれ?
……あれれれ?
ネックレスが…ないっ!!
あたしには遠恋中の彼氏
がいる。
田中 疾風(タナカ ハヤテ)
証券会社のサラリーマン兼、教師としても働く、優秀な25歳。
普通、こんな掛け持ち無理なんだろうけど、疾風くんは違う。
なんてったって、証券会社の次期社長だから。
教師が本職らしいけど、とにかくエリートなの。
その彼からクリスマスにもらった、ハートのシルバーネックレス。
肌身離さずもってたのに……
最悪。
どこで落としたのかな…
はっぴーだった入学式は、あんはっぴーに様変わり。
ついてない…
「キャァアアアアアアッ///」
「颯くんっ!!!」
「颯様っ」
「かっこいい///…」
朝からキャンキャンうっせ〜…
俺は、
中谷 颯(ナカタニ ハヤテ)
今年から高2の16歳。
黒髪のウルフに、灰色のツリ目の瞳。
耳にはピアスの穴だらけ。
一応好青年演じてるから、学校ではしてないけど。
今は今日からくる1年の、迎え係みたいな役任されてる。
まぁ俺は一応、生徒会長候補だから、仮生徒会に入ってる。
んでこんな仕事させられてるわけ。
でも毎回まいかいこう騒がれると、『女は一夜』という俺のポリシーは、跡形もなく、崩れ去った。
そろそろ適当に相手捕まえて、うるさい毎日に終止符をうちたいところだ。
「中谷、全員入場完了したか?」
学年主任の高橋に言われ、俺は名簿を見た。
……………あれ?
1−Dの『麻咲 李衣』っていう奴の欄にチェックついてねぇな…
他は……いねぇ。
こいつ誰だよ。
入学式に遅刻する奴なんて、そうそういねぇぞ?
俺はとにかく、そのことを高橋に報告した。
「じゃあ俺が親に電話してくっから、迎え係らへんで、近くを探せ。迷ってっかもしんねぇしな。」
「はい」
確かに。
この学校複雑な地形だからな…
俺は『麻咲 李衣』を探しに、走った。
あたしは一応、きた道を戻ることにした。
でも方向オンチなもんだから、わけわかんなくなってきて…
「ああ〜っ!!もうっ!!どこなわけっ?」
あたしは上を向き、思わず叫んだ。
「…どうしたの?」
すると男の子の声がして、正面を向く。
うっわ…………かっこよっ…
この人…全てがかっこいい…
ツリ目の冷たそうな印象だけど、笑顔が…
疾風くんっぽい……
あたしがボーッと考えてると、
唇に柔らかい何かがあたる。
あれ?
これ疾風くんとやったことないっけ?
あれ……?
あたしの思考回路はストップした。
しばらくして彼は、チュッとわざとらしくリップ音をならし、
「麻咲李衣。俺の彼女になれ。いや、ならねぇと犯すぞ」
あたしを脅した。
この人……何?てか、まず誰?
「なんでいきなりキスされて、見ず知らずの人の彼女になんないといけないわけ?!」
あたしがキレ気味にそういうと、彼は口元を少しあげる。
「俺が言ったことは絶対。結局はそうなる。必然だかんな」
………自信過剰すぎない?
てか…疾風くんがいんだけど。
「あたし彼氏いるから」
「はっ?……別れろ」
………無理強いするな…この人。
「無理でしょ」
「俺の言ったことは絶対なんだっ!!」
「無理だからっ!!」
「ふぅん…そっ…俺さぁ、モテるから、俺がお前に告ってふられたって女達がきいたら、お前確実に殺られんぞ〜?いいのか〜?」
………こわっ…
なんでこんなめに……
コイツがあたしに告白してきたのが悪いんじゃん。
あたしみたいな奴じゃない人選べこのやろ〜!!!
入学早々、あたしにはもう困難が立ちはだかるだなんて………グスン。
…疾風くん…ごめん。
あたし…ここで生きていたいから……
「わかった」
「よしっ!!契約成立っ俺がぜってぇ守ってやっから」
にこっと笑った彼の笑顔に、胸が高鳴ったのは気のせいだと思いたい。
それと疾風くんに重なったのも、気のせいだ…
とにかく、あたしはその場で疾風くんに電話した。
別れは寂しいけど、はやくしないと決心が鈍っちゃうし…(泣)
プルルルル…プルルルル…
『…はい。李衣?』
「疾風くん?今いい?」
『うん』
「ほんとに…突然なんだけど、別れよ?」
『えぇ?………あっ………まっまさか…美代の奴…』
…ミ…ミヨ?
『あ…のさ…美代が言ったことなら嘘だよ?俺には李衣だけだし』
…………美代、嘘、李衣だけ………?
………あたしは3つのキーワードで、1つの答えにたどり着いた。
「疾風くん…もしかして、浮気…?」
『ちがっ違うんだって!!そんなわけ………ん?あれ?…もしかして…知らなかった?あっあぁ〜!!てか俺が浮気するわけな〜い…』
…………あたしの中で、何かが燃え上がってきた。
「……疾風」
『はっはい?だから俺は李衣だけだ「黙れカス」…すいませんでした』
なによなによなによっ!!!
あたしは、いっつも疾風くんのこと考えて、想ってたのに…
疾風くんは…浮気?