「一緒に帰っただろ?」
「そうだっけー?てへっ」
可愛くねぇーよ。
なんか、琥桃らしくねぇ。
「どーかしたんか?」
俺がこう聞くと、目を見開く琥桃。
「なんで?今まで俺に干渉することなかったじゃん」
そういやそうだな。
「颯も少しは丸くなったか?」
チッまた俺を煽る…
どこまでもムカつく野郎だ。
「うっせー」
「てか、颯が俺に干渉してきたから言うけど、な〜ちゃんってば、ピュア姫でさぁ〜…マジ勘弁」
な〜ちゃん?
って小宮間のことか。
「いーじゃねぇか。俺色に染められて」
「いやいや、もっと軽めかと思ったのっ!俺は。でも、全然でさ…さりげなく熱っぽい視線送ったんだけど、全く効かなくて…正直相手にできないなーってね」
なんだそれ。
「琥桃がどうにもできないこともあんのな」
俺がこう言うと、少し眉が動いた。
多分今煽れば、コイツに火がつく。
それに…楽しいしな。
「小宮間も相手にできねぇなんて、万年発情期が廃るな」
「……………は?俺にできないことはねぇよ。死ね颯。ぜってぇ俺色にする。重い恋愛もばっちこいだ」
フッ思った通り、引っ掛かったなバカ琥桃。
内心浮かれた。
そういや小宮間が言ってたけど、来週の月曜日、李衣の誕生日なんだよなぁ〜
しかも、バイト面接いって、1週間だけ働くことにした。
俺が女の為に働くなんて…
ほんとに、自分変わったなぁとつくづく思う。
帰りは一緒に帰れないって、伝えとかないといけないな…
つか、どんなのプレゼントすればいいんだ?
俺は、小宮間を呼び出した。
因みに、琥桃もついてきた。
プレゼント選びには、一応連れていこうと思ってたし、ちょうどいいか。
誰も使ってない裏庭のベンチで、来週の月曜日の打ち合わせをした。
李衣ビビるかな…
想像して、ニヤリと笑った。
そこを目撃した小宮間が、
「颯様って、意外と“李衣色"に染まってるよね。李衣中心だし」
クスッと小さく笑った。
………そういやそうかも。
「ははっだね〜!あの皆の王子颯様が、1人の可愛い女の子に夢中だなんて…ギャッハー笑えるっ」
「こもちゃん?!いいじゃん!それだけ真剣なんだよ?最高の彼氏じゃんっ!」
小宮間は、キラキラした目で俺を見つめてきた。
なんか…どーもって感じだな。
しかも“こもちゃん"って…
「くく…」
俺は、喉を鳴らした。
「「どうしたの?」」
しかも2人がハモるもんだから、さらに笑えてきて…
「くっ…ぶはっ!お前ら最高だなっ…くくくっ」
「なんだよっ!颯!」
「いや、お似合いだと思って」
俺がそう言うと、小宮間だけじゃなく、琥桃もほんのり赤くなった。
意外に琥桃もその気なんじゃねぇーの?
まだじれったい2人の恋の始まりに、俺は空を見上げ、笑みを零した。
李衣に伝えないとな…
俺は、楽しみでたまらなかった。
だけど…
はぁ?俺と帰れない?
仮マネ?わけわかんねぇ。
今俺は李衣とともに、家に帰っている。
そこで聞かされた、仮マネと風瀬。
アイツ…最初から李衣を狙ってたな…?
だいたい…おかしいと思ってたんだ。
あの、李衣を見るときの瞳。
ただたんに見ているのかと思ったが、無表情なりに何かを想ってたんだな…
チッこんなことになるんだったら、はやめに手を打っとくべきだった。
俺は、眉を寄せた。
眉を寄せたとこで、李衣の顔は不安げ。
俺は、何も知らない李衣にムカついた。
だけど、タイミングがよかったのも事実。
今切り出さないと、チャンスはない。
風瀬が引っ掛かるが1週間じゃ、まだ動かないだろう。
俺は、眉の力を抜いた。
俺が、怒らなかったことに、少し表紙抜けする李衣。
だろうな…でも生憎、俺にも用事があったんだ。
それを伝えると、明らかに変な顔をする李衣。
バレたか…?
「そうなの?なんの用事?」
なんだよっ!こんなときだけ鋭いのか?俺は、少し焦った。
「べっ別にどうでもいいだろ。李衣には関係ない」
ちょっと言いすぎたな…コレ。
まぁ、これは、タネ明かしのときに謝ろう。
「ねぇはや…」
これ以上は、俺の口が滑りそうだ。
「あっ!もう李衣の家だな。またな」
俺は、なんとかはぐらかし、李衣と別れた。
李衣…不安になってるかな…
って…まぁこんぐらいでは、ないだろ。
李衣だって、マネの仕事に追われるわけだし、1週間なんてすぐ終わるな。
俺は夜空を見ながら、李衣のことを考えていた。
颯のことを考えていると、なかなか眠れなかった。
今日は、仮マネデビューの日なのに。
「おはよ〜」
クラスに入ると、次々に色んな人が挨拶してくれる。
そういえば、颯と付き合ってるのに、虐められたりしなかったなぁ〜
なんでだろ?
「りぃりぃ?おはー」
「あぁ〜奈葉。はよ」
奈葉が、あたしの席近くにやって来た。
「今日からだけど、颯様と話したの?」
「うん。多分大丈夫…なんだけど…」
あのときの颯の焦り顔が妙に気になる。
「なんだけど…何?」
不思議そうな顔をする奈葉。
奈葉に相談しようかな…
でも、今はまだよくわからないし、自分で考えてみよう。
「なんでもないよっ!」
あたしは、笑顔を見せた。
「そ…そう?」
奈葉は首を捻ったけど、追求はしてこなかった。
「おはよう。麻咲」
ん?振り返ると、胸。
上を見上げると、風瀬くん。
「あぁ、風瀬くんか〜!!おはよー」
あたしは、にこっと笑った。
「ん」
何故か風瀬くんも少し口元を緩めた。
初めて見たなーこんな顔。
「今日からよろしくな」
まだ笑ってる風瀬くんに、少し心が落ち着いた。
「うん!役に立てるかわかんないけど、それなりに頑張ってみるね♪」
「それなりってなんだよ」
「ふふっ」
2人の周りは和やかな空気で包まれていた。
そして、あっという間に放課後になり、あたしはジャージ姿になった。
仮マネだから、お茶補給とか、応援とかしとけばいいって言われたし、あんまりハードではないのかな…?
あたしは風瀬くんとともに、体育館へ向かった。
ダムッダムというドリブルの音。
シューズが、摩擦で擦り減る音。
ボールがアミを潜る音。
どれもが新鮮だった。
すっごい。なんか、皆キレがいいし…ほんとにすごい。
あたしは、目を輝かせていた。
「麻咲?」
はっ!やばい…皆さんのプレーに見とれてた。
「なっ何?風瀬くん」
「何じゃねぇーよ。今から挨拶なの」
あっ挨拶…!
「集合!」
「「「「「「「「オイ!!」」」」」」」」
「気を〜つけ〜礼っ」
「「「「「「「「しゃぁっす」」」」」」」」
多い…人数。
1…2、3、4…37人?!
37人もいんのっ!?
だって、5人しか試合には、出られないんでしょ?!
なんか…すごいレギュラー争いになりそう。
見てみたいなぁ〜