【完】甘辛ダーリン絶好調♪


「明日から来て」と、風瀬くんに言われた為、今は颯と帰ってる。

「ねぇ?颯?」

あたしは隣に並んで歩いている颯を、体を曲げてグイッと覗き込んだ。

「あ?なんだよ」

何故か眉を寄せる颯。

「えっと…明日から1週間ほど、バスケ部の仮マネすることになったから、先に帰ってていーよ?」

「はぁ?」

明らかに、あたしの仮マネ発言に機嫌を悪くした颯。

「あっのね?その…風瀬くんに頼まれて…前『松コン』で色々お世話になったから、お返しのつもり…で…」

どんどん顔が険しくなる颯。

やばいっ!完全に怒ってるー!!!




でも、スッと険しい顔をやめた。

怒られなかった。あれれ?

「そうか。わかった。俺も今週だけ夕方から用があるから、李衣に言おうと思ってたんだ」

用?颯が用があるなんて言い出すの珍しい…

「そうなの?なんの用事?」

あたしがそう聞くと、何故か顔色を変える颯。

「べっ別にどうでもいいだろ。李衣には関係ない」

なっ…関係ないなんて…酷い。

それに、少し焦ってた。

おかしい…

「ねぇはや…」

「あっ!もう李衣の家だな。またな」

話を遮られた。怪しい…

あたしは、最悪の事態を思い浮かべた。

浮気…

あたしは背筋がゾクッとし、嫌なほう、嫌なほうに考えてしまった。




いやいや、ないよね。

颯に限ってそんな…

うん。そうだよ。

とにかく明日から、仮マネ頑張ろっ!

あたしは、芽生えた不安に蓋をして、眠りについた。





昨日、李衣とヤれた。
マジ幸せ…

「は〜やってくんっ!なんか口がニヤケてますが〜?」

るんるん気分かなんか知らんが、琥桃が笑顔で俺のところに来た。

「はっニヤケてね〜よ」

「あぁ…ついに禁欲生活打破?」

流石琥桃。鋭いな。

「まっまぁな…」

「ほっほー…で?」

ぁあ?“で?"って何だよ。

「何がだよ」

「もーっわかってるく・せ・にっ!!よかったかってこ〜とっ!」

よかったか…?

勿論…

「かなりよかった」

爽やかな笑みを浮かべた俺。

「うっわぁ〜幸せそうだしぃ〜ムカつくぅ〜」

コイツ、小宮間と帰ってたじゃねぇーか。

「琥桃も、小宮間とどうなった?」

「へー?何が〜?」

しらばっくれやがって。





「一緒に帰っただろ?」

「そうだっけー?てへっ」

可愛くねぇーよ。
なんか、琥桃らしくねぇ。

「どーかしたんか?」

俺がこう聞くと、目を見開く琥桃。

「なんで?今まで俺に干渉することなかったじゃん」

そういやそうだな。

「颯も少しは丸くなったか?」

チッまた俺を煽る…

どこまでもムカつく野郎だ。

「うっせー」

「てか、颯が俺に干渉してきたから言うけど、な〜ちゃんってば、ピュア姫でさぁ〜…マジ勘弁」

な〜ちゃん?
って小宮間のことか。

「いーじゃねぇか。俺色に染められて」

「いやいや、もっと軽めかと思ったのっ!俺は。でも、全然でさ…さりげなく熱っぽい視線送ったんだけど、全く効かなくて…正直相手にできないなーってね」

なんだそれ。




「琥桃がどうにもできないこともあんのな」

俺がこう言うと、少し眉が動いた。

多分今煽れば、コイツに火がつく。

それに…楽しいしな。

「小宮間も相手にできねぇなんて、万年発情期が廃るな」

「……………は?俺にできないことはねぇよ。死ね颯。ぜってぇ俺色にする。重い恋愛もばっちこいだ」

フッ思った通り、引っ掛かったなバカ琥桃。

内心浮かれた。

そういや小宮間が言ってたけど、来週の月曜日、李衣の誕生日なんだよなぁ〜

しかも、バイト面接いって、1週間だけ働くことにした。

俺が女の為に働くなんて…
ほんとに、自分変わったなぁとつくづく思う。




帰りは一緒に帰れないって、伝えとかないといけないな…

つか、どんなのプレゼントすればいいんだ?

俺は、小宮間を呼び出した。

因みに、琥桃もついてきた。

プレゼント選びには、一応連れていこうと思ってたし、ちょうどいいか。



誰も使ってない裏庭のベンチで、来週の月曜日の打ち合わせをした。

李衣ビビるかな…

想像して、ニヤリと笑った。

そこを目撃した小宮間が、

「颯様って、意外と“李衣色"に染まってるよね。李衣中心だし」

クスッと小さく笑った。

………そういやそうかも。

「ははっだね〜!あの皆の王子颯様が、1人の可愛い女の子に夢中だなんて…ギャッハー笑えるっ」

「こもちゃん?!いいじゃん!それだけ真剣なんだよ?最高の彼氏じゃんっ!」

小宮間は、キラキラした目で俺を見つめてきた。

なんか…どーもって感じだな。

しかも“こもちゃん"って…

「くく…」

俺は、喉を鳴らした。






「「どうしたの?」」

しかも2人がハモるもんだから、さらに笑えてきて…

「くっ…ぶはっ!お前ら最高だなっ…くくくっ」

「なんだよっ!颯!」

「いや、お似合いだと思って」

俺がそう言うと、小宮間だけじゃなく、琥桃もほんのり赤くなった。

意外に琥桃もその気なんじゃねぇーの?

まだじれったい2人の恋の始まりに、俺は空を見上げ、笑みを零した。

李衣に伝えないとな…

俺は、楽しみでたまらなかった。

だけど…




はぁ?俺と帰れない?
仮マネ?わけわかんねぇ。

今俺は李衣とともに、家に帰っている。

そこで聞かされた、仮マネと風瀬。

アイツ…最初から李衣を狙ってたな…?

だいたい…おかしいと思ってたんだ。

あの、李衣を見るときの瞳。

ただたんに見ているのかと思ったが、無表情なりに何かを想ってたんだな…

チッこんなことになるんだったら、はやめに手を打っとくべきだった。

俺は、眉を寄せた。

眉を寄せたとこで、李衣の顔は不安げ。

俺は、何も知らない李衣にムカついた。

だけど、タイミングがよかったのも事実。

今切り出さないと、チャンスはない。

風瀬が引っ掛かるが1週間じゃ、まだ動かないだろう。