「へ?…別に…用事はないけど…」
「じゃあさ、図々しいと思うんだけど、仮マネしてくれない?」
カリマネ?
カリスママネー??
「いや、変な言葉の変換はよせ。仮のマネージャーだ」
あぁっ!仮マネね!!
危ないあぶない…
だいたい、カリスママネーって…自分で思っときながら、何だよ。
でも、マネージャーとか、ちょいと楽しそうだなぁ〜
んへへ…♪
あたしは、お花を頭に飛び散らせていた。
「なんか…りぃりぃ楽しそうだけど、颯様はいいの?」
はっ!!あたしは夢の世界から覚め、颯という現実を知った。
というか、思い出した。
そうかっ!颯と毎日帰ってるんだったっ!
手伝うなら、先に帰っといてもらわないと。
すでに、手伝う気満々だもんねっ♪
「風瀬くんには、『松コン』でお世話になったし、鶴の恩返し的な感じで、協力するね〜♪」
にこっと笑い、マネージャーの妄想をし始める。
「ふせっちって、意外と積極的だよね」
「あ?まぁ…ストレートじゃないと、わかんねぇだろ?あいつは」
「だよね〜(笑)まぁ…ファイトっ」
「あぁ。フッ…ダメ元だけどな」
2人がこんな会話をしているとも知らずに。
「明日から来て」と、風瀬くんに言われた為、今は颯と帰ってる。
「ねぇ?颯?」
あたしは隣に並んで歩いている颯を、体を曲げてグイッと覗き込んだ。
「あ?なんだよ」
何故か眉を寄せる颯。
「えっと…明日から1週間ほど、バスケ部の仮マネすることになったから、先に帰ってていーよ?」
「はぁ?」
明らかに、あたしの仮マネ発言に機嫌を悪くした颯。
「あっのね?その…風瀬くんに頼まれて…前『松コン』で色々お世話になったから、お返しのつもり…で…」
どんどん顔が険しくなる颯。
やばいっ!完全に怒ってるー!!!
でも、スッと険しい顔をやめた。
怒られなかった。あれれ?
「そうか。わかった。俺も今週だけ夕方から用があるから、李衣に言おうと思ってたんだ」
用?颯が用があるなんて言い出すの珍しい…
「そうなの?なんの用事?」
あたしがそう聞くと、何故か顔色を変える颯。
「べっ別にどうでもいいだろ。李衣には関係ない」
なっ…関係ないなんて…酷い。
それに、少し焦ってた。
おかしい…
「ねぇはや…」
「あっ!もう李衣の家だな。またな」
話を遮られた。怪しい…
あたしは、最悪の事態を思い浮かべた。
浮気…
あたしは背筋がゾクッとし、嫌なほう、嫌なほうに考えてしまった。
いやいや、ないよね。
颯に限ってそんな…
うん。そうだよ。
とにかく明日から、仮マネ頑張ろっ!
あたしは、芽生えた不安に蓋をして、眠りについた。
昨日、李衣とヤれた。
マジ幸せ…
「は〜やってくんっ!なんか口がニヤケてますが〜?」
るんるん気分かなんか知らんが、琥桃が笑顔で俺のところに来た。
「はっニヤケてね〜よ」
「あぁ…ついに禁欲生活打破?」
流石琥桃。鋭いな。
「まっまぁな…」
「ほっほー…で?」
ぁあ?“で?"って何だよ。
「何がだよ」
「もーっわかってるく・せ・にっ!!よかったかってこ〜とっ!」
よかったか…?
勿論…
「かなりよかった」
爽やかな笑みを浮かべた俺。
「うっわぁ〜幸せそうだしぃ〜ムカつくぅ〜」
コイツ、小宮間と帰ってたじゃねぇーか。
「琥桃も、小宮間とどうなった?」
「へー?何が〜?」
しらばっくれやがって。
「一緒に帰っただろ?」
「そうだっけー?てへっ」
可愛くねぇーよ。
なんか、琥桃らしくねぇ。
「どーかしたんか?」
俺がこう聞くと、目を見開く琥桃。
「なんで?今まで俺に干渉することなかったじゃん」
そういやそうだな。
「颯も少しは丸くなったか?」
チッまた俺を煽る…
どこまでもムカつく野郎だ。
「うっせー」
「てか、颯が俺に干渉してきたから言うけど、な〜ちゃんってば、ピュア姫でさぁ〜…マジ勘弁」
な〜ちゃん?
って小宮間のことか。
「いーじゃねぇか。俺色に染められて」
「いやいや、もっと軽めかと思ったのっ!俺は。でも、全然でさ…さりげなく熱っぽい視線送ったんだけど、全く効かなくて…正直相手にできないなーってね」
なんだそれ。
「琥桃がどうにもできないこともあんのな」
俺がこう言うと、少し眉が動いた。
多分今煽れば、コイツに火がつく。
それに…楽しいしな。
「小宮間も相手にできねぇなんて、万年発情期が廃るな」
「……………は?俺にできないことはねぇよ。死ね颯。ぜってぇ俺色にする。重い恋愛もばっちこいだ」
フッ思った通り、引っ掛かったなバカ琥桃。
内心浮かれた。
そういや小宮間が言ってたけど、来週の月曜日、李衣の誕生日なんだよなぁ〜
しかも、バイト面接いって、1週間だけ働くことにした。
俺が女の為に働くなんて…
ほんとに、自分変わったなぁとつくづく思う。
帰りは一緒に帰れないって、伝えとかないといけないな…
つか、どんなのプレゼントすればいいんだ?
俺は、小宮間を呼び出した。
因みに、琥桃もついてきた。
プレゼント選びには、一応連れていこうと思ってたし、ちょうどいいか。
誰も使ってない裏庭のベンチで、来週の月曜日の打ち合わせをした。
李衣ビビるかな…
想像して、ニヤリと笑った。
そこを目撃した小宮間が、
「颯様って、意外と“李衣色"に染まってるよね。李衣中心だし」
クスッと小さく笑った。
………そういやそうかも。
「ははっだね〜!あの皆の王子颯様が、1人の可愛い女の子に夢中だなんて…ギャッハー笑えるっ」
「こもちゃん?!いいじゃん!それだけ真剣なんだよ?最高の彼氏じゃんっ!」
小宮間は、キラキラした目で俺を見つめてきた。
なんか…どーもって感じだな。
しかも“こもちゃん"って…
「くく…」
俺は、喉を鳴らした。
「「どうしたの?」」
しかも2人がハモるもんだから、さらに笑えてきて…
「くっ…ぶはっ!お前ら最高だなっ…くくくっ」
「なんだよっ!颯!」
「いや、お似合いだと思って」
俺がそう言うと、小宮間だけじゃなく、琥桃もほんのり赤くなった。
意外に琥桃もその気なんじゃねぇーの?
まだじれったい2人の恋の始まりに、俺は空を見上げ、笑みを零した。
李衣に伝えないとな…
俺は、楽しみでたまらなかった。
だけど…