「すいません…琥桃先輩…」
あたしが丁寧に謝ると、
「李衣、コイツのことなんか“先輩呼び"する必要ねぇぞ?琥桃でいいんだ」
颯がそんなことを言い出した。
「うんそうそう!!俺、先輩付けなくても全然おっけー♪むしろ、李衣ちゃんならいつでも大歓迎〜」
琥桃先輩も、いいって言ってるし…
でも、琥桃って…なんか、堅い感じする。
じゃあ……
「モモちゃんでいい?」
「「モモちゃん?!」」
「うん。モモちゃん…可愛いでしょ?」
「うん!俺、そのほうがいいっ♪」
琥桃せんぱ…もとい、モモちゃんは、嬉しそうに笑った。
「奈葉も、打ち上げ行きたいでっす!」
何故か、颯のノックアウトから生還した奈葉が、手を挙げて、アピールしてきた。
「奈葉って奴…お前の何?」
耳元で、小さく話しかけてきた颯に、
「ただの馬鹿。そして悪女」
デカい声でそう言った。
「なっ!!ひどいっ!」
奈葉はブーブー言っている。
仕方ない…
「奈葉も連れてって?」
颯にお願いをした。
「おぅ…俺の嫌いなタイプじゃないならいい」
いや、もろ嫌いなタイプだろうけど…
そのことには、あえて触れず、あたし達は、颯の家へ向かった。
「ここ」
「「ここっ?!」」
あたし達は、颯の家に向かっていたんじゃ…?!
あたしと奈葉は、声をあげた。
それというのも、ここは…
「李衣ちゃん!!ここは、先月完成したばかりの超高層マンションだよ〜」
そう!先月完成したばかりの超高層マンション!!
テレビCMで、かなり宣伝してた。
颯の家が…ここだなんて…
「すごすぎ」
「そうか?この前、あのマンションから越したんだよ」
颯の指の先には、半年前に、かなりの価格で売り出していた高級マンション。
颯…金持ちかよっ!!
「まぁ…行こうぜ」
「う…うん」
何故か高級なとこに入ると、やっぱ貧乏癖がでるよね…
つまり、そわそわする。
「何そわそわしてんの?」
なんだか呆れ顔の颯。
「いや…高級すぎて…その…」
「李衣ちゃん?コイツの部屋、最上階だよ?」
………オウマイガー!!!
〜♪〜♪
エレベーターの、開閉の音すら綺麗なんですけどーっ!!!
「はい」
颯に案内され、部屋に入った。
広…広すぎる…
「やっばー!!奈葉、こんなに広いとこお初だしーっ」
なんかやばくない?
……チラリ
「ピクッピクピク」
(汗)…颯が、人の家に入っていきなり雄叫びをあげる失礼な奈葉に、キレてるーっ!!!!
眉がっ!!ピクピクしてるー!!!!
恐いよー(泣)
あたしは猛スピードで、奈葉を、
「黙れナス」
黙らせた。
「いやいや、充分李衣ちゃんも、恐いんじゃないかな?」
モモちゃんが、失礼なことを言ったので、
「モモちゃん!?『もも同盟』結ばないよ?!」
意地悪を言ってみた。
「何それ…?」
モモちゃんは、わけがわからないようす。
「だってりぃの“李"は、スモモって読むんだよ?だから、琥桃のモモと、李衣のスモモで、『もも同盟』」
「なっなるほど…でも“りぃ"って…か〜わいーっ俺、ももどーめー結ぶー!!意地悪しないからぁ〜」
「どんだけ結びたいんだよ。琥桃」
颯が口をだす。
「いいよっ!モモちゃん!『もも同盟』結ぶ♪」
あたし達は、『もも同盟』の儀式をした。
ただ、自分でハートを片方手でつくり、相手と合わせ、ひっくり返すという簡単な儀式だ。
「いや…あまりにも本気な感じが伝わってくるぞ…?」
颯は遠くで『もも儀式』を傍観している。
「あれあれ?颯様って、俺様だったんだーっキャハ」
「うっわぁどっから湧いた!?!」
「まぁ?王子に裏がありましたーっなんて、よくあることだしぃー」
「話聞けよ…」
向こうはむこうで、バトってるみたい。
「「「「…では」」」」
「「「「か〜んぱ〜いっ!!」」」」
儀式や一悶着があったものの、スムーズに打ち上げが始まった。
「つかさぁ〜李衣ちゃん、優勝しちゃうとかすげぇーじゃん?」
「えぇ?マグレだよ〜あたしなんか、普通に3年の藍河先輩に負けると思ったもん」
「ははっとか言って〜実は自信あったり?」
「ないない。モモちゃんじゃあるまいし…」
「いやいや。颯じゃあるまいし…」
「おい。てめぇら。何故俺の名がでんだ」
「それは〜颯様が、自信過剰だからですよー(笑)」
「潰されたいか?ドMか?小宮間」
「なんで苗字?」
奈葉だけ苗字なんて、おかしいよね?
「あ?李衣しか名前で、呼びたくないから」
…………嬉しい。
これは、意外と嬉しい…
あたしはニヤケる口元を、無理矢理おさえた。
「うっわっ!麻咲ちんがニヤケてるーっ!!」
“ヒューヒュー"とか言って、冷やかす奈葉に、ガンとばして黙らせた。
「だいたい小宮間も李衣のこと、“麻咲ちん"とか言ってんじゃん」
颯が尤もなことを言う。
確かに…
「えーっ李衣って呼びにくいんだもんっ!じゃあ、りぃりぃで」
「なんかそっちのほうが呼びにくくない?」
「えー…可愛いじゃん。りぃりぃ…」
「はっはぁ…」
あたしの呼び名が、りぃりぃに定着したところで、打ち上げも終わりを迎えた。
「「じゃあ」」
「うん!!ばいばーい」
モモちゃんと、奈葉は2人で帰っていった。
意外にラブラブだったりして…?
まぁ、あたしは少し颯の家でくつろごうと思い、残った。
くつろぎ中に、颯があたしに声をかける。
「李衣ー?風呂入る?」
「はっ?なんで?着替えないし」
「んーっ実は…あるんだなーコレが」
颯が見せてきたのは、ピンクと赤のレースの下着…しかも、際どいやつ。
「なんでそんなのあんのっ?!まず、際どすぎだからっ」
「えー…姉貴から買ってきて貰ったんだよ…下着屋でバイトしてるから。際どいの頼んだよ〜」
際どいの頼んだのかよっ!!
そして、お姉さんいたの!?
「まぁ、コレともう1つあるから、どっちか選べ」
あたしがもう1つとやらを見ると、普通に花柄レースだった。
コレだよね。普通は…
あんなに際どいの着れないし。
ここでお風呂入って、ゆっくりしてから、颯に送っても〜らおっ!
「颯〜?入っていいの〜?」
入っていいって言われたけど、一応許可をとっとかないとね。
「あ?聞くってことは、一緒に入るつもりか?」
…………はぁっ?!
「違うちっがーう!!りぃがそんなん言うわけないじゃんかー!!///」
少し赤くなりながら言うあたし。
恥ずかしー///
「また…りぃって言う…俺の前以外、自分のことりぃって言うなよ?」
「なんでー?」
ついでちゃうんだよねー…癖というか、なんというか……
「だって…りぃとか、可愛いし…ありえねぇし…って俺何言ってんだ…」
「可愛い?…うれしー♪」
「うぉっいきなり抱き着くなアホ//」
嬉しさのあまり、抱き着いてしまった。
「へへー♪」
つい、満面の笑みを浮かべてしまう。
「おっま…誘ってんのか馬鹿女」
「ちっちがうよーっ颯に可愛いって言われると、嬉しいんだもん…へへ…」
少し照れちゃうな…
俺は、李衣達を家に呼んだ。
李衣と小宮間は、俺の家がデカいらしくて、びっくりしてた。
普通だろ。
中に入ると、李衣に落ち着きがないことに気付く。
「何そわそわしてんの?」
「いや…高級すぎて…その…」
何だよそれ。
「李衣ちゃん?コイツの部屋、最上階だよ?」
琥桃の一言で、さらに落ち着きがなくなった。
部屋に入ると、図々しくも小宮間が、
「やっばー!!奈葉、こんなに広いとこお初だしーっ」
デカい声で叫びだした。
うっざ…コイツ、もろ俺の嫌いなタイプじゃねぇーか。
俺の眉はピクピクしだして、李衣がそれを見てか、『黙れナス』と言って、小宮間を黙らせた。
やるな。李衣も。