水納島はあまりにも美しく、人も少なく、島の人たちも本当に暖かくて親切だった。

その中で、シャッターを切る 智の姿はまるで別人のように見えた。
あたしの知らない智がそこにはいて、
いつか、いつか遠くへ行ってしまうような
・・・そんな気さえしてしまった。

智が写真を撮ってる間、あたしは海に入って、魚と一緒に泳いだ。
同じ日本なのに、海の色がどうしてこうも違うのだろうか。不思議。
小さな貝や珊瑚をあつめて、それを砂浜にならべた。

(トモ、アイシテル)

完成してまもなくパシャパシャと、シャッターを切る音が。

「やだ、やだ!!やめて~」
あわてて貝を砂で隠した。

『もう、その言葉はこのカメラに封印されました~』
「カメラ貸して!!!」
『ダメだよ!!幸に貸したら壊れちゃうから』

そう言って、智を必死に追いかけ
智は逃げ回る、ふざけすぎて智が転んで、それにつられるように
あたしも転んでしまった。
カメラは砂の上をゴロゴロと転がっていった。

「あ、大変!!!!!」
急いでカメラを拾いに行こうとすると、智はあたしの腕を掴み
ぐっと引き寄せた。

『カメラより、幸のほうが大事だよ』
「智・・・」

智は優しくキスをした。
幸せだった。
今はキット人生で一番幸せな時間だと確信した。

ねぇ、神さま。
楽しい時間はどうして、こんなにも早く過ぎてしまうのかな?