突然の事だった。
『あと、1ヶ月は本社勤務だし、それまでの間に考えておいてほしい。』
「でも・・・・」
『オレも、幸ちゃんのこと好きになってもう2年以上たってるし
 この移動もキット神様がもうダメなら諦めろって言ってるような気がしてさ』
「工藤さん・・・・」

『幸ちゃん。オレは本当に、幸ちゃんのこと一生大事にするよ。
 ずっと側で、幸ちゃんの弱いところも強いところも見てきたから
 過去は過去で受け入れるし
 これからの未来は、オレが幸ちゃんを笑顔にしてあげたい。』

工藤さんの顔を見つめていたら急に涙が溢れてきた。
どうして、泣いてるんだろう。

あたしの心は大きく動いていた。
いつも側にあったものが、突然なくなる悲しさは良く知ってる。
もうそんな想いはしたくなかった。
今まで、智がいなくて辛い時、悲しい時
ずっと側で支えてくれた。笑わせてくれた。

智以外の人の為に泣く事なんて、もう何年もなかった。
それは、智のことが薄れたとか忘れたとか
そんなんじゃなくて
キット、キット工藤さんという存在が
知らない間に、あたしの心の中で大きくなっていたんだと思う。

工藤さんは、あたしの頬を流れる涙を手でおさえて
優しく抱きしめた。
こんなに暖かい場所が、こんなに近くにもあったんだね。