呼び出しの音は聞こえるのに
鳴るばかりで誰も出ることはなかった。
智は日本に居るのかもしれない。

そして、あたしは一度電話を切って
そのままコウキの番号へとつないだ。

智の携帯が繋がる事を話すと、コウキも驚いていて
オレからも連絡してみると言ってくれた。

それから何日かして、コウキから連絡があり
智の居場所が分かったと言われた。
背筋がザワザワとして携帯を持つ手が硬直した。
智の携帯にはGPSと言う機能が付いていたという。
電話には出なかったものの
智の居場所は明らかになった。

そして、コウキと話し合って
次の休みに一緒に行く事にしたのだ。
場所は、ここから電車で2時間ほど離れた場所で
田舎と言うか、大きな町ではない場所だった。
もしも、ここで隠れるように暮らしているんだとしたら
一体、智はどんな風に生活をしているんだろう・・・。

あたしは、心が痛くなっていた。

相変わらず仕事は忙しかった。
残業も1日に何時間もしていたし、食事もキチンと取れない状態で
もうズット働いている。
ここの職場に来てから
あたしは4キロも痩せてしまった。

ある日の残業の後に、工藤さんが言った。
『オレさ、移動することになっちゃった・・・』
ここは本社で、支店がいくつかある。
「どこの支店にですか??」
あたしは正直驚いていた。
工藤さんは本社でも重要な立場にあったからだ。

『大阪だってさ。ホント、ビックリだよ。』
「大阪・・・遠くなりますね・・・。」
『幸ちゃんも一緒に行かない?』