『あのさ、オレも智のことは気になってたし、
 何か力になれるようなことがあったら協力するよ』

そう言って、彼は無造作にカバンから1枚の写真を取り出し
その裏にササッとカタカナで「コウキ」と書き
その下に携帯番号を書いた。


「これ、あなたが撮った写真?」
『そうだよ。智とは比べ物になんないだろ?』
そう言って大きな口をあけて笑った。

その写真は夕日が沈む頃の海の写真だった。
その風景は智のものとは違う力強さがある。

「何もわからないあたしがこんなことを言って失礼かも知れないけど
 とっても、いい写真だと思う。」
『智の彼女にそう言ってもらえると嬉しいな~』
そう言ってまた大きな口で笑ったのだった。


家に着いてから色々と考えてはみたものの
これ以上、智を探すのは難しいような気がした。
日本にいるのか、留学先にいるのかそれさえもわからなくて
探すといっても、どこから探せばいいのか全く検討も付かなかった。

その時 あたしはふと、携帯を見て思ったのだ。
もしかしたら携帯が繋がるかもしれない・・・と。

もう2年以上かけることのなかった智の携帯だけど
日本にいるなら繋がるかもしれない。

全身に鳥肌がたつような振るえが起きた。
智と、話がしたい。
智の声が聞きたい。

そして・・・慎重にゆっくりと智の番号を押した。