屋上のひんやりとした夜風に当たりながら
あたしはひっそりと涙を流していた。
わんわん泣くような、そんな感じではないのだ。

ただ、、、あたしは、智のことを待っているだけで
何も出来ない。
話をする事も、会いに行く事も、なにも出来ないのだ。
ただ待つだけの時間がどんなに長いものなのか・・・。
どうして半年も経つのになんの連絡もないのか・・・
それさえもわからない。

月を見上げても、涙は流れ続けている。
悲しいのに、泣いてるのに、心はどこか冷静でいる。


『幸ちゃん?なにかあった?』

「工藤さん・・・いつからそこに居たんですか?」

『もう、30分位前だったかな・・・幸ちゃんいきなり泣きながら走ってきたから出るに出れなくて・・・何かあった?仕事のこと?』

工藤さんは、とても優しい人で、みんなから信頼されていた。

「仕事のことじゃないんです。すいません・・・」
『オレでよかったらいつでも何でも話し聞くからね』

そう言って、ポンポンとあたしの頭に手を乗せた。
そのとたん一気に智の記憶が蘇ってきた。

智、智、智、智、智、智、智・・・・。

あたしは気が付けば声を上げて泣いていた。

「智~、智~・・・智・・・」

名前を呼びながらひたすら泣いて、たぶん工藤さんは驚いていたと思う。
それでも、あたしの肩に手を置いて
泣き止むまで何も言わずに見守っててくれた。

久しぶりの肩の暖かさで、人のぬくもりを思い出してしまったのだ。