恥ずかしくなってうつむくと、司会者の人は智の名前を呼び、
智は少し高くなったステージの上に上がった。

「今回は、1番大切なものと言うテーマで撮りました。
 僕には大切なものはたくさんあります。
 家族、友達、写真もカメラも、もちろん海も山も空気も全て大切です。

 しかし、その中で僕が一番ホッとできる場所。
 それは、彼女と一緒にいる時間だという事に気づきました。

 彼女の笑顔は、いつも僕を幸せにしてくれます。
 その笑顔で僕もまた頑張ろうと思えるのです。」

ステージの上の智と目が合った。

また、あたしは泣いてしまった。
笑顔のあたしで居たいのに、肝心な時はいつも泣いてしまう。

智は泣いてるあたしを見て、困ったように笑っていた。

結局、その日は智と一言も話すことが出来なかった。
智はずっとインタビューのようなものをされていたし、
学校の先生や、偉そうなおじいさんたちがズット智の近くにまとわりついていたのだ。

仕方なく、あたしたちは帰ることにした。

家に着いてからもずっと智のことを考えていた。
もしも、この先、智がもっともっと
有名になって、あたしの存在が邪魔になったら・・・
あたしは、このまま離れるしかないんだよね。
智の夢・・・叶えたいし。

そしてその日の夜遅くに、智から電話がかかってきたのだった。