あれはクリスマスの夜。
雪があまり降ることのないこの街で 
幸と智は出会った。
それぞれに、どんな1日を送っていたかなんて全く知らずに・・・

日付が変わろうとしていた頃、あたしは友達の萌に呼ばれて
少し離れた公園に向かっていた。
手袋とマフラーをしていても 風が頬を突き刺すように吹き付けていった。
自転車で急いで駆けつける。
急ぐ必要なんてないのに、クリスマスが終わる前に何か、
何かを・・・信じたかった。

萌には高校2年生の時から付き合っている彼氏がいる。
もうすぐ、2年が経つ。
萌とあたしは中学からの友達で、高校は別々になってしまったけれど
相変わらず仲がよかった。

高校最後のクリスマス。
彼氏の居ないあたしに気を使ってくれたのか、萌は、あたしに最高のクリスマスプレゼントをくれた。

息を切らしながら萌たちのところに駆け寄ると、暗い公園の中に3つの影が見えた。
萌は背が小さいからすぐに分かる。もう2つの影。
萌の彼氏と・・・もうひとつ、とても背が高いスラリと伸びる影。
あたしはドキドキしていた。

「幸~!!!コッチだよ~!!!」
静かな公園の中に萌の声が響く。
はぁ、はぁと白い息を切らしながら、あたしもその3つの影の中に入った。

「こんばんわ」最初に、萌の彼氏に挨拶をした。
すると、萌の彼氏も笑顔で頭を下げた。
「幸、こちらは智くん。」そう萌が紹介すると、
智は頭に手をかけながら「こんばんわ」と言って照れくさそうに笑った。

「こんばんわ、えっと・・・幸です。よろしくね」
あたしも簡単に自己紹介をして笑った。

4人は寒い公園の中で、おもいっきりはしゃいでいた。
智とあたしは初めて会ったのに、ナゼだかずっと前から友達だったかのように
気を使わないで話せた。
そして気が付いた頃にはすっかりクリスマスは終わっていて、
あたしたち4人も疲れきって2人掛け用のベンチにそれぞれ座っていた。

もちろん萌は彼氏と座ったので、
あたしと智は肩が触れ合うほどの距離で少し緊張気味に座った。

暗い公園の中には小さな外灯が5つあって、
その1つが萌たちのベンチとあたしたちのベンチの間に立っている。

萌たちの声は何も聞こえない。
何も届いては来なかった。