アンジュの店から


ケヤキ並木を眺めながら


ぼんやりと思考を


めぐらせていた。


春がくるの前の最後の寒さを


耐えているかのように


ケヤキの幹は北風に吹かれて


枝を揺らしていた。


コンコン


「私 入っていい?」


「かおり? どうぞ・・・」




ストレートな茶色い髪を


揺らしながら



かおりがドアの向こう側から



顔をみせた。



ラメをふんだんに使った


キラキラメイクは


ハリウッドセレブの間で


流行はじめて 今 


アメリカの女性の中で


大ブームを巻き起こしている。


ほりの深い顔立ちのかおりには


よく似合っていた。


「明日、アメリカに帰るの。


ママのことでは、愛子がいてくれて


よかったよ。倒れたときもそう


アンジュのこともそう


感謝しているわ。」


ソファーに座ると


つぶやくように言った。