静まりかえった


長い廊下を


赤いラインを頼りに


歩いていくと


叔母が運ばれた


救急治療室の前だった。



叔父は不安を隠し切れない


暗い表情で


作り笑いをした。


「どうなの?」


なんと言葉にしたらいいのか


わからないまま 尋ねた。



「運ばれてから、


ずっとここにいる。


頭が痛いって言い出してから


急に意識がなくなって


急いで救急車を呼んだんだ。」


言葉が見つからずに


叔父の肩をたたいた。


「きっとお休みになって


ほっとしたから、


疲れがでたのよ。


健康診断だって毎年


きちんとうけてる人だもの・・」


叔父は少しだけ微笑んだ。


「歳のせいかな・・・


愛子と電話がつながった時に


安心して涙がでたよ。」


「誰だって 自分の家族が


目の前で意識を失ったら


不安になるわよ。


叔父さんは今だって


充分に素敵だわ。」


「プッツ」今度は


恥ずかしそうに笑った。


決してお世辞ではない。


一時期流行った「ちょいワル親父」


のイタリアのタレントさんに


良く似ている。


長身でスマート、服装は


叔母が勝手にコーディネート


しているらしいが、イケてる風貌だ。


「ご家族の方に先生から


お話があります。」


緊急処置室から、白衣を着た


少しやつれた感じのドクターが


こちらに向かって歩いてきた。


「御説明しますので、


こちらの診察室にどうぞ」