「もしもし、森村です。」


「どうしたの?」


「遅い時間にごめんなさい。」


「それは構わないけど・・・


何かあったの?」


「何もない。声が聞きたくなって・・


まだ会社?」


「家に帰って ちょうどビールを


飲み始めたところ」



「あの~・・・


すごくイヤなんですけど


彼女が大阪にくるの」


い  言えた・・・


言っちゃった・・・。



深いため息をついたあと


克己は静かに語り始めた。



「今まで、自分の言うことをきく


女とつきあってきたんだ。


好みとか全然関係なくって。


俺のこと裏切らないかどうか


それだけで判断してきた。




だから友だちに


『いつも違うタイプとつきあってる』


って言われるけど


選ぶ基準が自分のいうこと


聞くかどうかだったから・・・。





俺って最低な男なんだよ。


19歳の頃


10歳年上の結婚している女と


付き合ってて・・・


ダンナが仕事している間に


家まで乗り込んでいた。


ご主人のカード持たされて


それで好きなだけ買い物してた・・・



その頃は 何もわかならくて


バカみたいに


『自分がすごい』って


思っていたんだ。



そんなことしていたから


本気で人が


愛せなくなっちゃったんだ。


信じられなくなって・・・



因果応報ってやつだろうな。


だから


今までずっと自分をゼッタイに


裏切らない女ばかりと


つきあってきた。


好きっていう感情が


自分の中から


なくなっちゃったんだよね。