pure

違う。


何かが違う。


傷口を怖いもの見たさで


見てしまうように


ふたをしていた自分の気持ちを


探っていく。




「まだ、何も始まっていないのに


もうすべてが終わってしまった。」


窓を伝う水滴のように


涙が頬を伝っていく。




「まだ、何も始まっていないのに


もう終わってしまった。・・・？



違う。


「まだ、何も始まっていないから


まだ何も終わっていない。」はず・・・


今までに　


気持ちが溢れ出しちゃうほど


誰かのことを好きになったことが


あっただろうか？



私の心が悲しいのは


克己が結婚してしまうかも


しれないからではなく


忘れられない女性がいるから


でもなく・・・



自分の中に生まれた気持ちを


伝えることができないからだ。


そう、せっかくの大好きな気持ちを


伝えられないなんて


この気持ちがかわいそうすぎる。



雲の隙間から


太陽の日差しが差し込んでくる


ように、心の中が少しずつ


軽くなっていった。


「いつ？伝える？


今度　電話がきたら・・・」


そう決めた。