pure

突然のカミングアウトに


ことばが見つからなかった。


動揺した。


そんな私の様子に気づいたのか・・・


克己は急に話をもどした。



「まだ、結婚するって


決まったわけではないですよ。」


「・・・私は　克己君に


幸せになってもらいたいだけ」


「ありがとうございます。」


「じゃあ、またね。」






結局　告りそびれてしまった。


あんなに勇気をだしてかけた


電話だったのに・・・


私の知らない克己がいた。


人間３０年間生きてくれば


それなりの思い出もあるし


忘れられない恋愛の


ひとつ　ふたつあるのは


当然のことだと思う。


克己の過去と現在に


翻弄されて　頭の中が


ぐちゃぐちゃになっていた。


やりきれない感情が


頭の中で渦を巻いていた。


魔法の杖で　水あめを瓶から


すくいとるように


この感情をすくいとって


しまいたい。


ケイタイ電話に装着した


グリーンの奇跡の石が


揺れていた。


魂がなくなってしまった


抜け殻のように


家に帰って食事を作り始めた。