「へぇ。で?」
で?って……
んな飄々とした顔で聞き返してこないでよ!
「だからその……ね?
旅行行っていいよね?
あと……
お母さんには黙ってて欲しいんだけど……」
なるべーく、
低姿勢で。
子供が親におねだりするみたいに、
お兄ちゃんの顔を下から見上げた。
けど……
「無理。」
ぷいっ、と顔を背けられた。
「なんでよぉぉぉ」
お兄ちゃんのバカぁ!
袖を思いっ切り引っ張って、お兄ちゃんに再度訴えた。
すると
聞こえるようにワザとらしく溜め息を吐いたお兄ちゃんは、
言い聞かせるように私に言ってきた。
「あのなぁ、バカ音遠。
母さんと俺とお前との約束、忘れたのか?
“音遠は高校を卒業するまでは外泊禁止”
って。」
……うん。
モチロン覚えてますよ?
覚えてるからこそ、
こうしてお願いしてるんじゃん。
私がお兄ちゃんにわざわざお願いするなんて、
滅多にしないでしょ?
「……っお兄ちゃんは中学生の時からしょっちゅう外泊してたじゃん!」
うっわ、なんかイライラしてきた。