雨の強い日だった。


奈津美さんからの着信に呼び出された私は静かなカフェにいた。
奈津美さんはここ一週間体調を崩して休んでいたから会うのは少し久しぶりで、急な呼び出しに緊張した。
体調はどうですか、とそんな会話も挟ませず、彼女は間を置かず本題に入る。


『そろそろ彼を返して』


奈津美さんはひどく穏やかに。だけどはっきりとした口調で私を見つめた。
重く長い沈黙はいつまでも続くんじゃないかと思った。



背筋が凍る様な緊張感、それからもっと酷く頭がガンガンしたのは、




『私達、別れてなんかないわよ?わに君はね、悪い癖があって時々店の女の子とかお客さんに手を出すの』



仕方ない人よね、彼女が確かにそう言ったから。