瑛ちゃんは、私の携帯を取り上げて自分のアドレスを登録する。
「いつでも連絡してね、恋愛相談聞くから」
緩い笑顔にため息をつく。恋愛相談、なんて瑛ちゃんの口から聞くと思わなかったよ。
「瑛ちゃんさあ、分からない人だよね」
「うん?うん」
何故疑問文なのか、ニコニコしている瑛ちゃんの考えてる事なんてさっぱりわからない。
「しいちゃんは分かりやすくて可愛いよね」
「はぁ」
もしかして、鰐渕さんへの気持ちばれちゃってるのか。バレバレなのか。こうみえて感情を隠すのは得意なのに。二度目の溜め息を瑛ちゃんは全く気に留めていないようだった。
瑛ちゃんは来年の決算月で仕事を辞めるらしい。私なんて辞めると言ってからダラダラと毎日が過ぎてるのに、あっさりと脱サラだという瑛ちゃんに複雑な感じだった。
瑛ちゃんの会社は大企業だし、適当に見えるけど仕事は出来るみたい。間違いなくエリートで何の不満なんかなさそうなのに。その思い切りのよさはどこから来るんだろう。