「鰐淵さんと付き合ってるんですか?」

聞きたくない、と心臓がすごい早さで不快に締め付ける。
目の端がピクピクしてきたからうまく笑えてる自信がない。

「うん、もう七年目だよ」

「そうなんだ。全然知りませんでした。お似合いですね」


七年、その長さに頭がグラグラする。会話をしているのが他人のようで、奈津美さんがそんな私の様子に気付いたのかは分からない。

「…わに君ね、仕事人間だから。バレンタイン上手くいって良かったね?椎那ちゃん行き詰まってたみたいだから気にしたよ。責任感の強い人だし。」


奈津美さんの言葉が的確に急所を突き刺すナイフにしか聞こえなくて、ただぼんやりと作り笑いを浮かべて奈津美さんを見つめていた。

「本当はちょっと、心配だったんだけどね?」

奈津美さんははにかんだ様に笑う。口の端にエクボができて、可愛い人だと思う。

「…そんな、私なんか。何もある訳ないじゃないですか」


「うん、わに君も椎名ちゃんに今回任せた事後悔してたみたいだし。」

吐き気がする心臓の痛さに目眩がする。

「あ、悪い意味じゃないよ?期待してる分、まだ早かったかなって事だから」

もう、何もかもが情けなくて奈津美さんを前にただ笑うしかできなかった。