「瑛太さん、来てたでしょ??」

やっと手が空いた時間、奈津美さんが駆け寄ってきた。何人もお客さんがいる中でその名前に該当する人が分からなくて、首を傾げた私に、「背の高い、フワフワっとした、美形だよっ」とキラキラした目で言う。

ああ、あの人。頷くと、奈津美さんはホゥとため息を吐く。

「かっこよかったでしょ?ウチのケーキ扱ってくれてる大手の業者さんなの。二年くらい前から担当になったんだけど、時々プライベートで来てくれるんだよ」

その度に店内の女性客の視線を攫うらしい。
その時はまさかこの先、長い付き合いになるなんて思いもしなかったけど。