あーーーー…
…なんて言えばいいか、分からなかった。
なぜ彼の顔がこんなに真剣なのかも、分からなかった。
「家は!?」
続く声もちゃんと聞こえた。
どうすればいいのか分からない。
とにかく私の腕はしっかりと掴まれているので、
逃げることはできないみたい。
その掴んでいる手が、緩んでやわらかになったことに気づいた。
「家、ない…?」
おおごとのように言うけれど、
確かに今の私は間違いなくそうだ。
何だか笑える。
そうだね。
今さらなんだけど、そうなんだよ。
自分にも言い聞かせるように、
私は首を縦に振った。