「せーんぱい?」
「───え?あ・・・いや、なんでもない」
「なんでもないって顔じゃねぇだろー、瑞樹。お前も今日いやに張り切ってたしな」
洋平先輩が「どうした?」と瑞樹先輩の肩を叩く。
あぁ、この二人の空気感って俺と海斗みたいなもんなのかも。
なんて関係ないことをぼんやり考えていた俺は、「拓巳、」と意を決したような瑞樹先輩の次の言葉に思わず固まってしまった。
「お前、本当に妃那ちゃんとただの幼馴染なんだよな?」
その言葉の本当の意味が分からないほど俺はバカでも鈍感でもない。
隣にいた洋平先輩も「まさか」という顔をしていた。
そんな俺たちの反応に瑞樹先輩の方が思わず動揺したのか「いや!」と慌てたように手を振った。
「別にその、好き・・・とかそういうんじゃないんだ。多分。まだ」
「・・・」
「でもなんていうか、上手く言葉に出来ないんだけど」
そこで言葉を区切って、瑞樹先輩は視線を遠くに投げた。
追いかけなくても分かる。その顔の向きは・・・妃那と夏乃が座っていた席の方角だ。
夕日のオレンジ色が瑞樹先輩を染める。
真っ黒な髪が明るく映えて、端正な顔立ちもより凛々しく見える。
男の俺から見たって“イケメン”だと思う。
強いて言うならば、“妃那好みのイケメン”だけど。
「妃那ちゃんが来てくれてる、っていうだけでどうしようもなくテンションが上がったし」
「・・・」
「1年が妃那ちゃん妃那ちゃんってギャーギャー騒ぐのを見ていい気分はしなかったし」
「・・・」
「ゲームしてる間も何度も妃那ちゃんが気になるし」