「瑞樹先輩はミッドフィルダーでしょ?」

「あぁ、そうだな」

「もし拓巳が点入れられなかったら、どうなると思う?」



───どうなるんだ?



「前までなら“拓巳の下手ー”って笑い事で済んでたかもしれない」

「微妙に妃那の声マネ似てんだけど」

「けど瑞樹先輩が絡んできたら“拓巳が瑞樹先輩のパス生かせないから負けるのよ!!”になるんじゃないの?」



ヤバイ。

あまりに無茶苦茶な屁理屈が妃那にありえすぎて笑えない。

(多分、海斗のモノマネが上手いせいもあるけど)

小さく見つからない程度に妃那に視線を送る。

あ、売り子からアイス買ってる・・・って違うな。貰ってんだな、あれは。

駄々をこねてる、っつーか理不尽な怒りのときの妃那は手に負えねぇからなぁ・・・。

はぁ、と小さく息を付いた。



「頑張るしかねぇか」

「うん。俺に余計な火の粉が来ないためにもそうしてもらわなきゃ困るんだよね」

「妃那は海斗には八つ当たりしねぇだろ?」



火の粉なんて行くか?と首を傾げると、



「だって、妃那が拗ねると俺の夏乃がそっちに行っちゃうだろう?」



と一言。

出たシスコン。そう呟いたら、海斗は嫌ぁぁぁなオーラを身にまとって笑みを深めた。



「みんなー!!拓巳が、妃那のために試合頑張るってーっ!!」

「「「「「「「「「「何ぃぃぃぃぃっ!!?」」」」」」」」」」

「え?ちょ、おい、海斗!!てめ、この裏切り者!!」




「妃那ちゃんとは何でもないんじゃなかったのか!」「どういう意味だ!」「妃那ちゃんは渡さねぇぞ!」というよく分からないチームメイト達からの攻撃を受ける俺を、

海斗は本当に本当に楽しそうに頬杖を付きながら観賞していた。



「だって拓巳が俺のことバカにするからいけないんだよ?」

「バカになんてしてねぇだろ!!」



必死な俺の声も届かない。

押しつぶされながら妃那を見ると、心底呆れた顔で口パクで「ばーか」と俺に言い放った。

よく見ろ、お前ら。

あれが妃那の本性だっつーの。