「この凶暴女!サッカー部の練習より痣が増えるっつーの」
「ち・が・い・ま・す!!大体、今お互いの承認あったでしょ!!」
「俺は事実を言っただけで、承認なんてしていない」
まったくもって悪びれがない。(いや、確かに暴力振るってるのはあたしだけど!)
あたしはもう一発行こうかと手を振りかぶった。
が、拓巳の反射神経の方が早く、あたしの手首はあっさり捕まる。
通学路で腕をつかみ合って力比べする男女・・・一体何に見えるんだろう。
(喧嘩?修羅場?・・・どっちにしろ、迷惑な話だ。───分かってても一発殴りたい!)
「おいこら、その手は何だ」
「あたしの手と貴方の頭は磁石のN極とS極なのよ」
「意味がわからねぇ」
そのまま力一杯腕を押してみるが、腐っても拓巳は男の子。
力で叶うわけがない。
諦めて腕を戻しながら、あたしは代わりにと言わんばかりに力一杯叫んだ。
「今日だってあと一歩で先輩とキスできたかもしれないのにぃぃぃぃ!!」
そうだ。今朝はここから始まった。
幼馴染みだからって遠慮もせずあたしの部屋にずかずか入り込んできた拓巳は、
勢い良く・・・確実あたしを女と思っていない勢いであたしを叩き起こした。
おかげさまで先輩の唇まであと1センチ。
ああ、こっちからいっちゃえばよかった。
なーんて悔やみもあるけど、やっぱり元凶は拓巳。
あと3秒・・・ううん、あと1秒・・・あー、堪能したいからあと5秒!
たったそれだけ待ってくれれば、先輩は(夢の中で)あたしのものだったのに!!
というわけで、起きて真っ先にあたしは部屋のありとあらゆる物を拓巳に投げ付けた。
帰ったら部屋の掃除しなきゃ・・・って思うほどにね。
気圧された拓巳は、いつもなら相槌すらしてくれないあたしの(正)夢の話を聞いてくれることになったのだった。
というわけで、話は最初と繋がると思う。