「ほんっとデリカシーないわよね!だから彼女が出来ないのよ!この童貞!!」
「ちょっ・・・てめぇ、女がんなこと言うんじゃねぇ!!」
さすがにそれには突っ込むぞ!!
大体なんで俺がそこまで言われなくちゃいけねぇんだっつーの!!
多少の羞恥と、妃那の口からそんな言葉が飛び出したことに対する焦りに俺が反射的に口答えすると、
妃那は「うるさい!」と仁王立ち。
「昨日!パック変えたのよ!!肌質全然違うでしょ!?」
「は?」
いや、それはさすがに気付けねぇぞ?
(誰か、お願いだから今すぐ俺の味方をして欲しい)
妃那と言えば、小さく呟いてしまった「は?」という単語に対しても目を吊り上げる一方で。
「肌すっごいしっとりしてるでしょ!」
出たよ、“しっとり”。
もういいよ、“しっとり”。
“しっとり”って何度も言ってると違和感あるな、“しっとり”。
つーか俺お前の顔とか触ってないから“しっとり”も何もねぇし。
「もういい!拓巳なんかに期待しないから!」
あー、そのセリフ昨日も聞いたなー。
なんて他人事のように考える。
え?昨日はなんで言われたかって?
なんでだっけ・・・・・・あぁ、そうだ。
妃那が夏乃にまじないを聞いたとか何とか。
そのよく分からねぇまじないには好きな人、すなわち瑞樹先輩の髪の毛が必要だそうで。
唐突にやってきて、「瑞樹先輩の髪の毛一本取ってきて!」と言われても断るのは当たり前だろ?
もちろんこの女にそんな常識は通用しないが。