そう言って素直に俺に頭を撫でられながら笑う妃那に、俺も笑った。

毎日これならいいんだけどなぁ・・・と思う俺を許して欲しい。



「・・・?」



けれど、問題はその後だった。

妃那は笑顔のまま俺の顔を見続けていて。

その顔に「他には?」と書かれていると分かるのは長年の付き合いの故か。

───とりあえず、他にも変化があったらしい。



「・・・」



じぃっと妃那の顔を見つめるが、イマイチ分からない。

段々妃那のその笑顔が引きつり始めていくのに気付き内心焦りを覚えるが、

それでもやっぱり変化が見られない。

顔か?髪か?服か?体型か?化粧品か?香水か?

視線をぐるぐる回し、聴覚や嗅覚に集中してみるが、やっぱり分からない。



「たーくーみ?」



確かに他のやつらよりは妃那をよく見ているし、だからこそ変化には気付いてやれると自負している。

けれど、見ても見てもまったくわからねぇ。

そんななかの妃那の声は、プレッシャー以外の何物でもない。



「まさか、分からないの?」



妃那の言葉の裏には、「そんなわけないよね?」という脅しとも取れるニュアンスが含まれていて、俺はハハと乾いた笑いを漏らした。

それだけで、妃那も分かるだろう。

案の定、この感情の起伏の激しい幼馴染はピクリと口元を動かすと、その細めた目にすーっと冷気をこめた。

所謂、“目が笑っていない”。



「ふぅーん。拓巳、かわいいかわいいかわいいかわいい幼馴染の変化にも気付けないんだぁ?」



気付いただろ、髪!!・・・と叫ぶのは内心だけ。

こんな状態のコイツにとやかく言ったって火に油を注ぐだけなのだから。

ぎゃんぎゃん騒ぐ妃那の言葉にぐっと口を閉ざした俺だが、妃那の怒りはエスカレートする一方。