「あ!!」



そういえば!と妃那は突然体を起こした。

そのいきなりの行動に思わず驚くのは俺の方。

両手でクッションを抱えたまま下から真っ直ぐ俺を見つめてくる妃那に、俺は目を瞬かせた。



「そういえばさ、拓巳の恋バナって聞いてない!」

「・・・はぁ?」

「散々人に初恋がまだとか言ってバカにしてきた割に!

拓巳の話って聞いたことないかもしれない!!」



な、何を言い出すんだコイツは。(突拍子が無いのはいつものことだが)

はぁ?と顔を歪めている俺をお構い無しに、妃那は「いや、初恋は知ってるか。確か幼稚園のときー・・・」と勝手に人の過去を暴き始める。



「いや、多分お前が気付いてる以上のことはねぇよ?」



初恋が幼稚園。

その次が小学校。

中学で一人の女の先輩に憧れてみたりした。

妃那の言葉に出てきた3人以上、何かあった記憶は俺自身ない。

そんな俺の言葉に、妃那は「そっか!」とあっけらかんと笑った。



「拓巳って分かりやすいもんね!」

「お前に言われたくねぇよ」



にこっと笑った妃那の頭に軽いチョップを食らわせる。

その瞬間感じた髪の違和感に、思わず俺は妃那の前髪をつまみ上げた。



「お前、髪・・・」

「分かる?昨日新しいトリートメント剤使ってみたの!」



さすが拓巳!と満足そうに微笑んで、妃那は上半身だけピョコピョコはねさせた。

そう褒められてもなんとなく気付いただけだし、と苦笑する。



「なんつーか、重くなった?」

「あのねぇ、これ“しっとりしてる”って言うの!」

「しっとり・・・」