意味が分かりません、と言いたげにあたし以外のみんなの声が揃った。
視界の端で、首をかしげながらも瑞樹先輩がハンバーグをお箸で半分にする。
そして
「うわ・・・」
と、誰かの声が聞こえた。
〜〜〜っ、もう!どうしてあたしがこんな思いしなくちゃいけないの!!
罪悪感と羞恥心にうっすら涙が出てきてしまう。
「拓巳が食べる、と、思った・・・か、らっ・・・」
声も思わず涙声になってしまった。
「だからってこれは・・・」と苦笑した海斗君の声と、「何何?」というお弁当が見えないらしい夏乃の声。
「ハンバーグの中にぎっしり詰まってたんだよ。───・・・ミックスベジタブルが」
「は?」
「はははっ、妃那ちゃんってこういうことやるんだ」
呆れた様子の海斗君と、怪訝そうな夏乃、そしておなか痛いと言いながら笑い出す洋平先輩。
意地悪な女って思われたかな?性格悪い、って印象まで付いちゃったらどうしよう・・・
(いや、ホントに自由奔放な拓巳に対する腹いせのイタズラなんだけど!)
いまだ反応しない瑞樹先輩を、あたしは祈るような気持ちで見つめていた。
すると・・・
「ん」
「え?」
「おい、瑞樹!?」
突然ミックスベジタブルの詰まったハンバーグを、瑞樹先輩がパクリと食べた。
にんじんもグリンピースも嫌いなはずなのに・・・驚いたのは、みんな一緒。
瑞樹先輩は表情1つ変えずに口を動かすと、あたしを見て優しく笑った。
「美味しいよ、妃那ちゃん」
「み、瑞樹先輩ぃぃぃ〜〜〜っ!!!」
その笑顔に全身の力が抜ける。
お前好き嫌い直ったのか?という洋平先輩の言葉に、苦笑しながら瑞樹先輩は首を横に振った。