「───これって・・・」

「すっげ、ハンバーグじゃん。良かったな?瑞樹」



中身を見た瑞樹先輩が目を見開く。

そして覗き込んで口笛を吹いた洋平先輩の言葉の意味が分からなくて、あたしは「え?」と首を傾げた。



「瑞樹ハンバーグ大好物なの。しかもデミグラスソースのヤツ。

嫌いなにんじんとグリンピースも入ってねぇし・・・すげぇな、妃那ちゃん」



まるで瑞樹のための弁当だ、そう言った洋平先輩の解説をあたしはぼんやりとどこか遠くで聞いた。



───突然、久しぶりのお弁当のリクエスト

───朝寄った、コンビニ

───『お前、次会ったときは絶対俺に感謝することになってるからな!』

───珍しい委員会の仕事



もしかして、拓巳・・・っ!!

ううん、もしかしてなんかじゃない。

拓巳、狙ってあたしのお弁当を瑞樹先輩に食べさせようとしたんだ・・・。

だって料理はあたしの特技、絶好のアピールポイントだもん。

幼馴染の計画性と配慮に、感動っていうか驚いてぼんやりしていると、瑞樹先輩が「妃那ちゃん?」と首を傾げた。



「え?あ、はい!」

「いただきま「ちょちょちょ、ちょっと待ってください!」・・・え?」



一口サイズのハンバーグ。

一気に食べようとした瑞樹先輩を慌てて止めると、隣の夏乃までが驚いたようでピタリと動きを止めた。



「あの・・・すっごく、申し訳ないんですけど・・・っ」



あぁ、拓巳のバカ!!

瑞樹先輩に渡す計画だっていうなら最初から言ってくれれば良かったのに〜〜〜っ!!

真っ直ぐ瑞樹先輩を見れなくて、あたしは思いっきり視線をずらしながらおそるおそる口を開いた。



「・・・ハンバーグ、半分に切ってください」

「「「「は?」」」」