「おー、お前ら早いなぁ」

「お前のせいで遅くなったんだろー?」



ギーッとドアがあいかわらずさび付いた音を立てて開き、海斗君の後ろに二人人影が出来る。

今日はベスト着てるよ、瑞樹先輩・・・っ!!

思わず胸の前で手を組んで、洋平先輩を肘で突く瑞樹先輩を見つめてしまう。



「お前は弁当だからいいものを」

「え?瑞樹先輩弁当なんですか?」



珍しいですね、という海斗君の言葉に同調するように夏乃とあたしも瑞樹先輩に目線を送る・・・って!!



「みみみ、瑞樹先輩、それ・・・っ!!」

「んー?拓巳に貰った」



開いた口が本当に塞がらなくなってしまった。

だって、瑞樹先輩が軽く持ち上げた手にあったのは、

朝あたしが拓巳に渡した黒のミニバックだったんだもん。



「昼休み始まってすぐ拓巳が慌てて俺の教室来て、

“妃那に弁当作って貰ったんだけど、食べる時間が無くなっちまいました。

残すとアイツうるさいから代わりに食べて貰えませんかー?”

って押し付けてったんだよなぁ」



俺が食べてもいいの?

そう言った瑞樹先輩に、あたしは取れちゃいそうな勢いで首を上下に振った。



「っていうか妃那ちゃんの前で食べたらバレる話なのにな」

「ハハッ、拓巳ああ見えて馬鹿だからね」



そんな風に笑い合いながら、先輩二人は地面に座る。

いただきます、と律儀にあたしに向かって手を合わせた先輩に、あたしは嬉しさと恥ずかしさいっぱいで「どうぞ」と言った。

パカ、とお弁当箱が開く音がする。

そんな音に反応しちゃうほどあたしはドッキドキ。

だってまさかこんな形で瑞樹先輩に手料理食べてもらうことになるなんて。