あたしのことなんでもわかってますー的な素振りやめなさいよね。
あたしが拓巳を睨みつけると、拓巳は柔らかく目を細めて突然あたしを見た。
「でもお前は一途、だろ?
好きな食いもんも、化粧品も、洋服のブランドも、雑誌も。
海斗にも夏乃にも、俺にも」
・・・
その言葉と、表情に、あたしは思わず固まってしまう。
普段は色んな男の子と遊んだり、あちこちの美容院行ったり、試供品貰いまくったりしてるあたし。
そんなあたしを呆れたように拓巳は見てたから───うん、とりあえずまぁ普通に考えて“一途”には見えないと思うんだけど。
確かに“変わらず好きな物”は小さなことでいくつかあって、まさかそれさえも気付かれてるだなんて夢にも思わなかった。
「き、気持ち悪いなぁ、褒めないでよ突然!」
「お前褒められ慣れてるんだろ?」
「おあいにくさま、可愛いと綺麗と優しい以外は中々ないの!」
「自慢になってねぇよ」
ぷはっ、と噴出すように笑って拓巳は視線だけをあたしに向ける。
「ま、そんな照れ隠しも妃那らしいけどな」
(バレてるし・・・)
とりあえず悔しいから結局鞄に遠心力を付けて殴ってみた。
上手い具合に膝裏に入ったことによって拓巳は転んで、
ヤバイと思って逃げ出したら案の定追いかけられたので全力疾走。
朝一から、学校まで拓巳と鬼ごっこをする羽目になったのだった・・・。
(「お前のせいだろ!」と息を切らせた拓巳に怒られた)
「お前、次会ったときは絶対俺に感謝することになってるからな!」
「意味分かんないし!!」