ふん!と鼻で笑って、いまだ呆然とする拓巳の一歩先を歩く。
「そりゃそうなんだけど」と腑に落ちない様子の拓巳の声がブツブツ聞こえるから、
あたしは文句を言うために振り返った。
「何か問題でも?」
「睡眠時間と美容と自分の支度に異常なほど固執するお・ま・え・が!!
1時間近いゆとりをもって学校に行く真意を探ってるだけ」
「あら心外」
「バカ言え。裏がないとは言わせねぇぞ」
あたしの頭を軽く小突きながらサラリと言ってのけた内容は図星も図星。
センターど真ん中。
「言っとくけど、センターとど真ん中は同じ意味だからな」
「人の思考読まないで!」
「読める表情しないでクダサイ」
ホント拓巳って人のこと馬鹿にしてるとしか思えない!
わざとらしく棒読みで言った拓巳はベッと舌を出すとそのままあたしを置いて前を歩いて行ってしまった。
その姿さえ数分前のあたしと一緒で・・・なんだか悔しい。
「で?そんな拓巳クンはあたしの目的ももちろんお分かりなのよね?」
少し小走りで拓巳の横に並ぶ。
拓巳はあたしに目をやることすらなく、真っ直ぐ前を見て「まぁな」と答えた。
「瑞樹先輩。それ以外にあるわけねぇだろ?」
おー、さすが。
そういう意味を込めてパチパチと拍手したら、当たっても嬉しくねぇなんて小さく笑って悪態をつかれた。
どうしよう、鞄で殴ってみようかな。(英和辞書と古語辞典入ってるけど)