くっそー・・・俺なんかしたか?
協力しかしてねぇだろ?
嫌な物を摘み上げるようにおそるおそるストラップだけを親指と人差し指で持って鞄から引きずり出す。
空気を振るわせ続ける振動音が、やけに耳に響く。
「ほらー、早く出なよ」という海斗は至極楽しそうだ。
そんなヤツを横目で見ながら、俺はようやく震える親指を通話ボタンに伸ばした。
「・・・もしも『拓巳のばかぁぁぁぁぁぁッ!!!!』
俺の言葉が終わるより早く、耳が裂けそうな妃那の声が響き渡った。
その威力はすさまじく、近くにいた海斗までが両耳を手で塞いでいる。
「───ったく・・・なんだよ、さっきはお前俺に感謝してただろ?」
『当たり前よ!だって天沢先輩からメール来たのよ!?』
「じゃぁなんで俺バカとか言われてんだよ」
さっき叫んだことである程度はすっきりしたのか、多少落ち着いた様子の妃那は『だって!』とプリプリ怒りながら口を開いた。
『拓巳、天沢先輩になんてメールしたの?』
「はぁ?覚えてねぇよ」
『だったら教えてあげる!“妃那が先輩に何か言いたいことあるらしいんすけど、勝手にメアド聞けないとか気にしてるんでメールしてやってもらえませんか?”よ!!』
「おー、改めて聞いてもカンペキな言い訳じゃねぇか」
『だからバカなのよ!このバカミ!!』
「誰だバカミって」
ミしか一緒じゃねぇよ。
どの辺が妃那の逆鱗に触れたのか分からず頭を掻きながら妃那の言葉に耳を傾ける。
『あたし先輩に用事なんてないし!先輩から、「話って何?」って聞かれて今メール止まってんだけど!!』
「知らねぇよ、そんぐらい自分でなんとかしろよ」
『拓巳がまいた種でしょ?責任取りなさいよ!』
「なんでそこまで協力してやらなきゃなんねぇんだよ!!」
『ひっどーい!可愛い幼馴染が困ってるのを黙って見過ごす気!?』
「そうは言ってねぇだろ!!!」