「拓巳と妃那だって似たようなもんだろう?」



脳内の妃那に突っ込んでいると、海斗はきょとんと首を傾げた。

「まぁな」と頷く。

女親同士が仲良かった妃那と俺は、生まれてこの方ずっと一緒にいる。

幼稚園も、小学校も、中学校も、高校も。

運動会も、文化祭も、食事会も、旅行も。

アルバムを見たって俺の隣に妃那が映っていない写真はない。

それぐらいずっと一緒にいて、妃那が傍に居るのは当たり前のことだった。



「でも、だからって全てが分かるわけじゃないんだよね」

「・・・」

「だから、過信しちゃだめだよ。拓巳」



そう言った海斗の笑みは少し恐怖さえ感じるほどで、夏乃を思い出した。

海斗の言葉は俺が身をもって分かりきってることで、

けど俺が分かってるということを分かった上で発言する海斗の真意はどうも掴めない。



「───また男の友情、ってやつか?」

「もちろん。俺から拓巳への愛情表現かな」

「うわ、マジで気持ち悪ぃ」



ハハッ、と笑い飛ばす俺を見る海斗の表情は満足げ。

まぁその気持ちだけはありがたい、ということで「サンキューな」と俺も笑った。



「・・・って、妃那?」

「は?」

「ほら、携帯」



海斗が指差す先を視線で追いかけたら、鞄の中でピカピカ自己主張するピンクのネオン。

───なぜだろう。

これだけなのに、すごい嫌な予感がするのは・・・なんでだ?

「拓巳?」と視界の端で海斗が首を傾げる。



「まだ鳴ってる・・・メールじゃなくて電話じゃない?」

「───海斗、お前出る気ねぇ?」

「 絶 対 嫌 だ 」



頬杖付きながら目を細める海斗は完全なる高みの見物体勢だ。