「サッカー部の応援とか来いよ。せっかくだから仲良くなろうぜ」



こんな勧誘の言葉、聞きなれたものなのに。

まさか天沢先輩の口からその言葉が聞けるなんて夢にも思わず、

あたしは口を押さえて立ち尽くす。

隣の夏乃に「妃那!」と小声で呼ばれると同時に肘鉄されてあたしは我に返る。



「え?あ、ここここちらこそ!仲良くさせていただけたら・・・嬉しい、です」



最後は届いたかも分からないくらい小さな声だった。

けど、視界の端に映った天沢先輩は、初めて見たときと同じキラキラの背景を付けた笑顔であたしを見ていた。

やっぱりあたしの心臓は制御不能なくらい高鳴って、

痛いくらい苦しくなって、

でもそんな感覚が決して嫌じゃなかった。



「それじゃぁ、悪いけど次俺ら体育なんだ」

「俺とも仲良くしてね、ひーなちゃん」



天沢先輩が立ち上がる。

隣の加藤先輩も無邪気な笑顔であたしにひらひらと手を振った。

それは、天沢先輩とのお別れを意味していて、一気に寂しさがあたしを襲う。

一言二言、拓巳と海斗君と部活の事務連絡をする横顔をぼんやり見つめていたけど、

その姿が後ろ姿になった瞬間、



「あの!!」



あたしは思わず声を掛けていた。