「はぁ?瑞樹知らねぇの?葉月妃那ちゃん、有名人じゃん」



同じように天沢先輩の隣に座った知らない男の人。

っていうかいたんだ、気付かなかった。(だってあたし天沢先輩以外目に入らないし)

天沢先輩を呼び捨てにしてるところを見ると、先輩なんだろう。



「葉月妃那ちゃん、っていうんだ?」

「え?あ、は、はい!」

「可愛い名前だね」



ごめんなさい、あたし今飛び降りそうな衝動に駆られました・・・っ!!!

だ、だって天沢先輩があたしの名前を呼んでくれた!

可愛いって言ってくれた!!

それが、どんなに嬉しいか・・・!!



「田原の妹は?」

「田原夏乃です」



そっか、と天沢先輩は夏乃にもにっこり。

そんな万人に優しいところがまた素敵・・・っ!!



「聞いたと思うけど、俺、天沢瑞樹。よろしく」

「あ、俺俺!加藤洋平!良かったら覚えといて」



天沢先輩の隣にいた人も、それなりに整った顔立ちをしてる人だった。

黒髪の短髪で、屈託なく笑う幼い顔は先輩と思えないほど可愛らしい。

あたしは天沢先輩一筋だけど、中々悪くない男かも。

(やっぱり拓巳の学校ってイケメンぞろいだ)



「妃那ちゃん、膝大丈夫だった?」

「はい!保健室行ってきました。軽い打撲と擦り傷で、特に問題はないです」

「それは良かった。アイツにはグラウンド20周させておいたからね」



クスクス、と悪戯っ子のように目を細める天沢先輩にきゅーんと心臓がつぶれそうになる。

っていうか、さりげなく名前で呼ばれちゃったし。

死因が【キュン死】なんて、天沢先輩相手だったらありえちゃうかも。

っていうくらいもう心臓がバカみたいに跳ね上がる。