「とりあえず、天沢先輩とあたしを知り合いにしてくれる?
あとはきっかけさえあれば自分でなんとか出来ると思うし」
「うわ、この女怖いなぁ」
にっこり、と笑顔で告げると隣の夏乃が顔を引きつらせる。
知ったことじゃありません。
だって、こんな想い初めてなんだもん。
男の子はあたしに尽くす者、あたしを褒め称える者、あたしを欲しがる者。
だけど天沢先輩だけは・・・全然違うんだもん。
「ったく、仕方ねぇなぁ」
「───拓巳?」
幸せが逃げ切りそうな大きなため息とともに、拓巳が携帯を取り出す。
唯一ついているシンプルなレザーのストラップはあたしの誕生日プレゼント。
それを指に絡ませながら、女の子顔負けのスピードで親指を動かす彼に、
あたしはクエスチョンマークを浮かべる。
「協力してやるよ、後が怖ぇもん」
「・・・一言余計」
そう言ったけれど、内心なんだか嬉しくて。
そんな気持ちがバレバレみたいに、拓巳はあたしの顔を見ると口角を少し上げて笑った。
「ところで、何やってんの?」
「呼び出せっつったのお前だろ?」
「え?マジで呼び出してんの!?」
「なんか文句でもある?」
あまりにも携帯をいじっているから問いかけると、返って来た予想外の返答。
あたしは天沢先輩に会える恥ずかしさに赤くなり、
そしてどうすればいいかわからない困惑に一気に血の気が引いた。
対する拓巳はケロッとした様子で悪びれた様子もない。
「た、拓巳のバカ!デリカシーない!最低!!」
「はぁ?お前が呼べっつったんだろうが!!」