「───で、誰なわけ?妃那の好きな人って」
「それが分からないから二人を呼び出したんでしょ?」
お弁当に入っていたエビフライを口に入れながらそう答えると、
二人は「は?」とあたしの顔を見つめた後に顔を見合わせた。
何よ、その反応。
「誰かも分からず好きなわけ?」
「うん!一目惚れだもん」
堂々と宣言したら、二人は改めて顔を見合わせて、それから思い切り肩を落とす。
文句を言おうと口を開きかけたけど、夏乃まで「当たり前の反応よね」なんて言うからあたしが声を上げる隙なんてなくなって。
だから、3人を無視してあたしの運命の王子様を説明することにした。
「あのねぇ、髪の毛は黒くってサラサラで、目がくるんとしてて優しくて、声はちょっと低めかなぁ・・・それでめっちゃかっこいいの!
そんな人、いない?」
「いっぱいいすぎて分かんねぇよ」
「もっとその人だけの特徴ないの?」
バカにしたような拓巳と、呆れ半分の海斗君。
あんなカッコいい人がいっぱいいるわけないでしょ!!
むーっと口を尖らせながら「とにかくかっこいいの!」と主張するあたしを、隣で夏乃が「まぁまぁ」となだめる。
「っていうかさ、なんでその人なの?」
口いっぱいご飯を頬張りながら海斗君があたしに問いかける。
だから、「朝人にぶつかられて転んでさぁ」と膝に張られた大きなガーゼを見せる。
「でもその人謝ってくれなくて、夏乃がめっちゃ怒ってて、
その時後ろから“大丈夫?”って声掛けてくれたのがその人なの!
タオル貸してくれてね、でもそのまま急いでるからって走ってっちゃって・・・」