「ちーっす!」



AM7:00。

部室で着替えを済ませた後、軽く挨拶しながらグラウンドに降り立つ。

雲一つない青空に自分の声が吸い込まれていくのが心地良い。



「朝早いのに覚醒してんなぁ。日生(ひなせ)」

「当たり前っすよ。もう起きて2時間は経ってますから」

「早起きだな、お前。ありえねぇ・・・つーか、朝から何してんの?」

「ちょっとランニングを」



眠そうに目をしばしばさせた先輩・・・三上陸斗先輩に声を掛けられる。

俺は自慢げに笑って見せた。

そんな俺を「すげぇな」と三上先輩は笑って、そして「負けてらんねぇわ」と俺の背をボンッと力強く叩いた。

───とは言ったって、別に真実は自慢なんて出来るものじゃない。

先輩にばれないように小さく苦笑する。



『ちょっと拓巳!何寝てるのよ』



朝、俺を夢の世界から引き戻したのはそんな声だった。

夢か?なんで朝から妃那の声が聞こえるんだ。

そう思って布団をたぐり寄せて潜り込む。



『このあたしに起こされて寝ててもいいなんて思ってるわけ?』



思っているとも。

逆になんでお前は俺の睡眠を妨げる権利を持ってる。

妃那の不機嫌きわまりない声に俺は内心反抗した。



『だってあたしだもの』



あぁ、そうですか。

というか人の心を読むな。

もうどっか行ってくれ、という気持ちを込めて「うー」と子供のように唸った俺の布団を妃那は強引にはぎ取ると、

『だから起きなさい!』と母親のように怒鳴った。