「じゃあね」
「え?あ、あの・・・!!」
ひらり、と手を振って彼は颯爽と走っていく。
その背中が小さくなるスピードはものすごく早くて、
あたしは真っ赤な顔のまま、ただ黄色いタオルを握り締めてそこに立ち尽くした。
角を曲がってしまってその背が見えなくなっても、あたしはまったく動けなくて。
ただこの脳裏に焼きついた笑顔に、
熱い頬に、
涙が出そうな瞳に、
飛びそうになる意識に、
呆然としていた。
「・・・妃那?どうした、大丈夫?」
「夏乃、どうしよう」
「は?」
どうしよう、夏乃!!
あたしは夏乃に掴みかかった。
驚きに目を見開いて戸惑う夏乃だけど、あたしに余裕なんてなくて。
ただ、自分でも信じられない自分の事実を夏乃に問いかけた。
「一目惚れ、って信じる!?」
葉月妃那。15歳。
生まれて初めて、恋、したみたいです。
(ラッキーカラーは黄色!)
(ほら、夏乃の占いって当たるでしょう?)
(「さっきぶつかった男の子がAB型だったりして」)
(「まっさかー!」)
(・・・そのまさかだと知ったのは、それからすぐのことでした)